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有機JAS認定のジビーフがと畜されました

公開日: : 2018/01/16 ジビーフ(完全放牧野生牛)

有機JAS認定のジビーフ第一号の屠畜がさきほど終わりました。できれば立ち会いたかったのですが、いかんせん北海道ですから。北村貴さんが立ち会ってくれているのでそこは安心ですが、奈緒子さんの投稿には子を持つ母親のコメントがたくさん。我々男性には分からない心境もありますが、これほど大勢の方に支えられ応援してもらっていることへの感謝と勇気と将来への希望がなんとも嬉しい。ジビーフは業務用販売しかしていませんが、今回のお肉になってくれた有機JAS認定のジビーフは、半頭分を一般販売の予定をしています。販売時期がきましたらメルマガでご案内させていただきます。今月23日入荷してきますので、おそらく2月中旬頃の販売になるかな。きっちり手当てして仕上げますのでどうぞご期待ください。

さて、ちょっと長いですがぜひお読みください。

以下、奈緒子さんの投稿↓
————————————
有機ジビーフ第1号として、本日『貴ちゃんママ』を出荷した。
2年半悩んだあげくのママ出荷……

貴ちゃんママは、H24年4月30日生まれの5才。これまでに3頭の娘を出産している。
第1子が『貴ちゃん』(北村貴さん命名(笑)) 初産で貴ちゃんを生んだ時にも他のお母さん牛とは違う行動をした。生まれたばかりの貴ちゃんを思いっきりドつく助走をつけてドつく貴ちゃんが吹っ飛ぶほどに。
貴ちゃんを殺してしまうかもしれないと思い、貴ちゃんをソリに乗せて連れて来ようかとも考えた。夫に相談したら、奈緒子が近くで見ているから余計に興奮しているのかもしれないから半日くらい放っておいた方がいいと言うのでその通りにした。夕方見に行くと貴ちゃんがおっぱいを飲んでいた!ホッ
それからは過保護に一転。いつまで経っても貴ちゃんを手放さず、貴ちゃんもその気で、1才になりお母さんとさほど変わらない大きさまで成長しても離乳しなかった。一才になってもたまにまだおっぱいを飲んでいることはそう珍しい話でもなく、ジビーフあるあるなのだが、問題はここから。

貴ちゃん出産からちょうど一年後に次女の『くーちゃん』を生んだ。
ところが……たった今生んだのはくーちゃんではなく、相変わらず近くに居た貴ちゃんだと勘違いしてるのだ!
おっぱいが欲しくてママに近寄る生まれたばかりのくーちゃんをドつき、すっかりデカくなりすぎた貴ちゃんをまるで今生んだかのように舐めまくり、貴ちゃんが少しでも離れようものなら大声で鳴く!
貴ちゃんと引き離し、牛舎でくーちゃんと2頭だけにしてみたがくーちゃんが近づくと逃げて一向におっぱいを飲まさない。ママを固定してくーちゃんに授乳させて慣れさせようと一週間やってみたが、その度に悲しそうな声で鳴くママ。そのうちおっぱいも出なくなり断念したのでした… その後くーちゃんは6ヵ月間粉ミルクで育てました。

ひょっとしてこのママはママに向いてないのかな? いや、前回はくーちゃんと貴ちゃんを勘違いしただけ、次に生まれる子はきっとちゃんと面倒みるよ!貴ちゃんだってお母さんになったことだし、もうちゃんと自立してるから大丈夫
……という私の期待は……

くーちゃん出産から一年足らずで三女の『タマちゃん』を生んだ。
もう貴ちゃんは側には居ない。にも拘らず……またもやタマちゃんを拒絶!
マジか~ーー!
前回同様、タマちゃんと二人っきりで牛舎での授乳の特訓も虚しく、またもやタマちゃんを6ヵ月間粉ミルクで育てる羽目に。おかげで呼んだら走ってくる可愛いあの娘に成長したんですがね。……

こうして次女を出産してから2年半、このママが『完全放牧ママ』に向いているか否かの見極めをしてきましたが、これ以上は厳しいという判断を致しました。
完全放牧でなければ、牛舎で生ませてすぐに母子を引き離して粉ミルクで育てる日本の一般的な飼育方法なら、このママでも十分繁殖牛として活躍できたことでしょう。
逆に自然界なら、くーちゃんもタマちゃんも生き延びることはできなかったことでしょう。

粉ミルクで育てることが悪いことだとは思いませんが、人間の手によって一日に与えられる回数はせいぜい頑張って3~4回。自然哺育の10回には到底追い付きません!回数が少ない分一度に飲ます量が多いため、消化しきれず下痢も起こしやすいし、成長の度合いも一目瞭然!

色んなことを考えた2年半でした。本当はお母さんにはなりたくないママも居るのかな?我が子を愛せない親も居るのかな?おっぱいを吸われて形が崩れるのを嫌がるママも居るのかな?
そしてそんなママたちはきっと苦しいはず。
それはまるで人間社会を反映してるようでもありました。

貴ちゃんママを、出荷しようと決断したことが正しかったのかどうかは分かりません。
ただ、貴ちゃんママが生まれて、3頭の可愛い娘を出産し、そのうちの一頭は立派に育てあげ逞しいお母さん牛になったこと。もうそれだけで十分な働きをしてくれました!
そんな貴ちゃんママを、最後は美味しいお肉にしてあげたいと思いました。お肉としても最大限に力を発揮できるうちに。大好きなお肉屋さんと大好きなシェフにうんと美味しくしてもらって、沢山の人たちを笑顔にしてほしい!
私が思うに5才で3産している牛はとてつもなく美味しいんです。こう断言できるのは、決して私が3産しているからではありません。(笑)

そして、そんな貴ちゃんママに私がしてあげられる最後のこと、それは記念すべき『有機ジビーフ第1号』になってもらうことでした。

『世の中に十億の母あれど、我が母に勝る母はなし』

貴ちゃんママ ありがとう!!

 

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