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消費者が求める赤身肉と肉屋が思う赤身肉との違い

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赤身肉の需要が高まっている。私の周りでもサシの入った肉はちょっと無理、、、という声が年々多くなっている。数年前までは「俺も年にはかてないなぁ、昔はサシが入ったカルビなんていくらでも食べれたのに最近は赤身のほうがおいしく感じるもんな」という声を聞いたものだが、最近では年齢関係なく、サシが入った肉を敬遠する人が多い。

しかしだ、肉牛を飼育する農家からすれば、サシを入れないと高値で売れないのが現状で、赤身になる牛なんか作ったものなら経営もままならない。目指せA5なのだ。和牛の象徴といえば「サシ」であり「柔らかさ」なので、私は農家がサシを重視することはなにも悪いことだとは思っていない。私のようにみなさんが赤身赤身と言いだしたら、それこそライバルが増えて困るというものだ(笑)

ところで、畜産関係者が思っている赤身肉と消費者が思っている赤身肉はどうも違うみたいなのだ。とりわけ農家が思う赤身肉といえば格付けの低い肉、つまりA3やA2あたりのモモ肉です。私たち肉屋が言うところの赤身肉は、ズバリ格付け関係なく「モモ肉」なのだ。写真のように上質なモモ肉(ウチヒラ)にはサシが入る。でも区別は赤身肉。正確には「ちょっとええ赤身肉」といったところかな。

消費者が抱くモモのイメージは「赤身」であり、写真のようなモモを送ればクレームになりかねない。「モモを注文したのにロースが来ましたが・・・」みたいな。

サービスのつもりで上質のモモ肉を用意したつもりがクレームになれば本末転倒。サシが入っていようがいまいが部位的にはロースではないからあくまでもモモ肉として販売するしかない。苦肉の策として当店では「霜降りモモ」として販売しているのだが、モモ肉でも少し脂がのったものが欲しいという方に好評だ。

おそらく、いや、間違いのない事実だと思うが、全国の肉屋、特に和牛を扱う肉屋は、モモにサシが入っていれば「おぉー、ええ牛やんけ」と思っても、「くそっ!サシが入ってるやんけ」などとは思わないはず。

では、消費者がいうところの「赤身肉」とはどのような肉のことなのだろうか?

ここでいう消費者というのは、幅広い層の消費者ではなく、当店でお買い物してくださるお客様をイメージしているものであり、メールをいただいたり、私と直接話したり、また肉Meetsなどイベントに参加していただいた方の話しをまとめたものだ。

赤身肉というのは、サシの1つもない直球な赤身のことをいう。写真のウチヒラなんかは赤身肉ではなく、部位はどうであれ消費者から見れば霜降り肉なのだ。肉屋は霜降り肉=カルビやロースという概念がどうしても拭いきれないのだが、消費者が求める赤身肉は、一点の曇りもない真っ赤な肉なのだ。

当店で真っ赤な赤身肉を求められるお客様の大半は、海外経験者だ。つまり求めている赤身肉は、パリやニューヨークで食べたことがある赤身肉なのだ。しかも、ドライエージングビーフが普通に売られているので、そういった肉をイメージしている。

そう考えると、和牛のモモ肉は多かれ少なかれサシが入る。私たち肉屋は赤身だと主張しても、海外の牛肉と比べれば赤身ではない。ということで、こちらの写真をご覧いただきたい。求めるベストな赤身肉とはこういう肉を言うんじゃないだろうか。

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完全放牧野生牛のリブロースですが、真っ赤です。重量も平均的な和牛のリブロースは10kg前後あるのですが、完全放牧野生牛のリブロースは2kgでした。穀物飼育ではないので大きくなれないのです。しかも山間を走り回っているので足腰が丈夫な代わりに肉は硬めで水分も多いのです。

完全放牧野生牛は純粋アンガス種なので、イメージ的には、シャロレー、リムーザン、オーブラックなどの肉とよく似ていると思います。フランスでは、4~5才の経産牛を食べるのが基本だそうです。そういう意味でも、肉質が硬めの完全放牧野生牛は海外経験のある方々、特に赤身肉を探しているシェフにこそ使っていただければと思います。

 

 

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