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熟成肉同様、赤身肉にも定義がないのです

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さて、なんの肉でしょうか?…..

牛肉には違いないのですが、おそらくですよ、料理人10人に聞いたら深読みしすぎて鹿肉と答える人が5~6人はいるんじゃないかな。じつは、私もはじめて見たとき間違いましたからね。正解は、完全放牧野生牛(ジビーフ)です。

ところで、赤身肉の需要が年々増えてきて、ここ最近では完全に霜降り肉の需要と逆転しています。健康志向やダイエット、糖質制限などにひっぱられる形で赤身肉がワードになっていることが一因にはあると思いますが、私的には霜降り肉が一昔前と比べておいしくなくなったということがあげられます。つまり肉の脂に味がないということです。

「熟成肉」がブームですが、ドライエージングとウェットエージングの2通りがあります。私からすればウェットエージングした肉を熟成肉と名乗るのは合点がいかないのですが、熟成肉に規定がない以上、広い意味での熟成と捉えています。

ウェットエージングは言葉だけ聞くと、なかなかやりそうな呼称ですが、なんのことはない真空パックの肉のことです。これこそ霜降り肉がおいしくなくなった原因の最たるもので、便利さと引き換えに脂を殺してしまうという欠点があります。真空パックにした肉は日持ちはするのですが、いったん封を切ってしまうと一刻も早く処理しないと日増しに肉が劣化します。特に脂は酸化しやすくなり、肉の味がしなくなります。

そういう点では、赤身肉は脂が少ない分、幾分ましなように思います。ただ、赤身肉も極めていくと、黒毛和牛で赤身肉はないのかなと、、、そんな結論に最近達しました。つまり、和牛はモモに代表される赤身肉でも若干のサシが入ってしまうのです。格付けの低いA2やA3でもサシは入ります。ジビーフのように真っ赤ということはありません。A4やA5に至っては、モモといえどもロース並のサシが入ります。

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ここまでサシが入ると、かなり重くなります。赤身肉のオーダーで売る側はモモをチョイスしたとします。よかれと思って写真のようなサシが入ったモモを用意すると、喜ばれるどころかへたすりゃクレームです。サシが入っていれば喜ばれるだろう考え方は、それこそ一昔前の需要であって、いまは赤身といえば要望されるものは真っ赤な肉なのです。

特に海外生活が長い方は、その傾向が強いように思われます。当然、完全放牧野生牛のように脂っ気がまったくない真っ赤な肉は、肉質が硬いです。しかし、それも含めて求められているのです。柔らかい肉が良い肉だという時代は終焉です。

完全放牧野生牛は、牛舎で飼われることもなく自然のまま育っています。川に入って水も飲めば崖さえも自力で登ります。

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一般的に肉牛は人口受精があたりまえですが、完全放牧野生牛は自然交配です。私はこの写真を見たとき衝撃でした。まさに自然のまま、動物の本能ですよ。

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熟成肉同様、赤身肉も定義なんてものはありません。肉が赤ければ赤身肉です。私が一緒に取り組んでいる生産者の方々、近江牛なら木下さんや藤井さん、完全放牧野生牛は西川さんというふうに、いまは生産者が黙々と作業する時代ではないのです。料理人や消費者とつながり、本音を聞き、そして飼育にいかさなければ求められる味に近づけることなんてできないのです。

生産者は牛を飼うことに一生懸命だと思いますが、料理人や感度の高い消費者は命がけで食と向き合っているのです。6月17日から3日間、完全放牧野生牛を訪ねて北海道ツアーを行います。完全放牧野生牛を使っていただいてる東西のシェフが店を休んで参加されます。レストランが3日も店を休むって考えられます?…すごいことですよ、ほんとに。

北海道に着いたその日は、とかち帯広の生産者も交えて肉Meetsを開催します。2日目から怒涛の生産者めぐりです。料理人だけではなく様々な分野の方が参加されます。自分たちの足で出向いて、つながって、環境を知って、すべてを皿の上に再構築する料理人たちの姿はマジでカッコいいと思います。

ブームはブームで悪いことではありませんが、私たちが取り組んでいることはブームに左右されることなく、唯一無二の牛肉であること、そして、それらを評価してくれる方とつながって輪が広がればTPPなんて問題ないと思うのですがいかがでしょうか。

 

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