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肉の仕事は奥深くておもしろい。それがわかるまで最低3年はかかるのです。

※撮影:yoshida solo

枝肉を仕入れて、サバキ(骨を外すこと。骨を抜くともいう)から精肉にするまで、さらに、一頭一頭の枝肉に手当てを施しながら仕事をしている肉屋はとても少ない。手当てだけをとればおそらくそんなことやってるのは僕だけかも知れない。そもそも手当てってなに?魚屋や鮨屋じゃあるまいし・・そんな感じですね、きっと。

僕が修行していた20代前半。その店は半端なく忙しくて、繁忙期なんか店売りだけで1日3桁売るようなバケモノ店だった。レジから札があふれ、あふれた札をレジ下に置いてるバケツ詰め込むという無茶苦茶な繁盛店だった。おかげで仕事量も多く、お客さんが見ている前で僕が枝肉をサバいていくのですが、もう嫌で嫌で仕方がなかった。同年代の子たちが買い物に来ると、なんか恥ずかしくってカッコ悪くって。いま思えば辞めなくてよかった。耐えてよかった。

あれから30数年、路面の肉屋は減り、流通も変わった。サバキをやっている肉屋もほとんどない。時代の流れといえばそれまでだが、人材育成が遅れている業界だから仕方ない部分もあります。いまどきサバキをやりたい若者もいないし、だから職人も育たない。

でも、このしんどい部分こそが肉屋のおもしろさであり醍醐味なんです。カッコつけた言い方をすると、肉に命を吹き込めるのはこの部分しかないんです。

部位ごとに真空パックされた肉を仕入れたほうが楽だし便利。歩留まりも計算しやすく利益も出しやすい。でもね、一番しんどい部分を人任せにして肉を語るのは、なんか嘘くさくて僕の性には合わないんです。

熟成、ドライエイジング、ウェットエイジング、枯らし。中途半端な人がはき出す情報を咀嚼して言葉が一人歩きしている。肉がブームになることは業界にとってはけっして悪いことではないけど、にわか肉博士の言葉のなんと薄っぺらいことか。先日なんてイベントで同じ席だったら人が僕に熟成肉を語りはじめてウンザリした。知識を披露したいのは分からないでもないけど辛い席だった。

さて、10月24日は吉田全作さん(吉田牧場)と2人でコラボ会をやります。1時間か2時間程度しゃべって肉とチーズで盛り上がるという・・チーズも肉もオール吉田牧場です。料理はイルジョット高橋シェフにお願いしました。セジール&サカエヤも総出です。

吉田さんの話しがでたので最近流行り(笑)の放牧牛のことを書きますね。駒谷牧場さんのジビーフと同じように吉田牧場さんのブラウンスイス牛も放牧です。放牧といっても捉え方と解釈の仕方がマチマチで、例えば、1日のうち数時間日光浴させただけでも放牧という方もいます。僕からみればなんちゃって放牧ですが、ヨーロッパではあたりまえの放牧も日本では土地の関係もあり根付かないと思います。

牛は牛舎に入れっぱなしが日本流です。そうでなければ上質の脂を持つ和牛は育たないです。舎飼いと放牧、どちらが良いとか悪いとかではなく、牛の生態系に合わせて飼うのが僕は良いと思っています。放牧だから管理しなくていいね、と言う人もいますがとんでもないです。舎飼いだと餌の量は調整できるし外敵もいないのですが、放牧はどれだけ餌を食べたのかわからないし、ジビーフなんか一度熊にやられたこともあるんです。熊って一気に食べないらしんです。笹の葉で隠して少しずつ食べるんですって。まぁ、自然の中へとけこませて飼っているのでリスクもあります。ただ、人工的な味がするのか大地の味がするのか、みなさんはどちらがいいですか?

最近、外食で肉を食べる機会があり、酸化した脂をうまいうまいと食べている人たちを見て、なんだか虚しくなりました。僕はやっぱり最後まで責任を持って手当てした肉を届けたいと思います。それが使命であり役割です。

 

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