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Fête de Fermier Yoshida in Droit

昨年の11月のこと。東京某所で開催されたシークレットイベント。ご参加いただいた皆様は高評価だったのですが、僕はちょっとだけ後悔していまして、というのも出荷とイベント開催日が短すぎてうまく手当てできなかったのです。しばらくは自分の技術不足に落ち込み、いまも後悔しか残っていません。そんな僕の技術不足を補ってくれた森永シェフの料理はとにかくすばらしかった。料理に助けられた感じです。

終わってから、もう一度やりたい。完璧な仕上げでホームグランドでやりたい。そんなことをシェフと話し、そして、僕と森永シェフに声をかけてくれたジオードの門上武司さんにもそのことを伝えたのです。早々に日程が決まりましたが、まさかコロナとは。Droitも営業自粛中で森永シェフもテンションが上がらない日々を過ごしていました。5月に入り、開催予定の6月12日にはおそらく休業要請が解かれるだろうと。森永シェフも僕も一気にスイッチが入り、と同時に、吉田牧場さんからブラウンスイス『ライチ』7歳が入荷してきたのです。

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5月某日
吉田原野さんから、『ライチ』はすこぶる元気だったが妊娠困難のため出荷したと連絡がきた。屠畜日は5月13日、開催日が6月12日。前回は熟成期間が短かったため満足いく仕上げが出来なかったが、今回は言い逃れができないベストな日程だ。僕が仕上げる肉は放牧させているものが多く、どれも個性的だが、ブラウンスイスは特に手当てが難しい。水分量が多いので、まずは自由水を抜いてやり、そこから繊維を緩めていかなければいけない。わかりやすい表現をすると、絡まった糸をほどくイメージだ。ほどきすぎると柔らかくなりすぎるので、ほどほどの状態で森永シェフに渡したい。

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前回と同じく、メニューを決めるためにサカエヤで実際に肉を見ながら打ち合わせをした。結局、二転三転して、前日にメニューが固まったそうだが、もし、森永シェフがうちに来ていなかったら、今回のメニューは作れなかっただろう。前から言い続けていることだが、料理人は生産者のところへは行くけど、仕入れ先には行かない。時間があれば仕入れ先へ行き、肉を見て触るべきだと激しく思う。もちろん生産者のところへ行って牛を見たり人柄に触れることも必要だとは思うが、僕の中ではそれほど重要視していない。余談になるが、Droitってどういう意味なのか調べたら「まっすぐ」なんですね。森永シェフそのもの。いい店名です。

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この日の参加者は、新潟からUOZENの井上さん、MOTOÏの前田さん、元辻調の須山さん、吉田全作さん、原野さん、門上さん、鳥取のかに吉、山田さん、そして新保の8名です。

『Fête de Fermier Yoshida』スタートです!

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吉田系タルトレット*Tartelette de F.yoshida

吉田牧場のチーズ全種類で作ったタルトレット。真ん中の丸いの全作さんをイメージして作ったそうです。「全作玉」と名付けていました。

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ブラウンスイスのコンソメ*Consomme de brown swiss

コンソメは難しいです。本当に。おいしいコンソメってなかなかお目にかかれないのですが、飲み干すと吉備高原といつか行ったときのブラウンスイスたちが浮かびました。

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ミルクのヴルーテ*Velouté de lait

真ん中の青いのは青梅。おかわりしたかった(笑)

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アバラグー(内臓の煮込)カルヴァドス風味*Ragoût d’abats au calvados

内臓とゆり根ってこんなに相性がいいんですね。驚きました。それにしても『ライチ』の内臓のピュアなこと。

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ガレット コダカ/フレッシュチーズ*Galette sarrasine

森永シェフの真骨頂、ガレットだ。森永シェフと知り合ったのは、前職のカンティーヌ オー ディスコだった。もう何年前になるだろうか。僕がフランスから帰ってきてすぐにガレットがおいしい店があると聞いて訪ねたのだった。

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アスパラガス ソテー ソースブールブラン*Asperge sauté sauce beurre blanc

このアスパラのうまいこと。ソースは吉田牧場、手づくりバター。

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サーロインとリブロース 溶岩グリエ*Entrecôte et faux filet grillé à la pierre de lave

メニュー作りのとき、ここが一番迷った。当初はサーロインだけの予定だった(シークレットイベントのときはそうした)のだが、リブロースが良い感じに仕上がっていたので、それなら食べ比べようと。同じロースからとれる部位なので目を閉じて感覚を集中させないと分からないくらい微妙だった。手当てして仕上げたのは僕だから、僕は分かって当然だが、参加者はどうだったのか聞くのを忘れた。

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フィレ ポワレ 骨髄添え ソースボルドレーズ*Filet poêlé sauce bordelaise

サーロインとリブロースで終わるはずだったのだが、ブラウンスイスを表現するにはヒレだと思うので、最後にヒレを持ってきた。すでにお腹がいっぱいなので、食べながらお腹が空くというオカルト的な現象。柔らかいのに柔らかくない。しっかり繊維を感じながら咀嚼する。とろけるほど柔らかいヒレもおいしいけど、このヒレはどこか懐かしい。

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フロマージュ盛り合わせ*Assiette de fromage

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森永プリン*Crème caramel

もちろん牛乳はブラウンスイスの搾りたて。

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最後にヴェルヴェーヌ*Verveine

なんとも体が軽い。そしてなんとも心地いい。もっと食べたいという衝動にかられる。もう一度最初から食べたいと皆が言う。

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ワインはindigoのブロンドォ ヴォアンソンさんのペアリング。身振り手振りが激しすぎてピント合わず。

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華奢(きゃしゃ)な森永シェフですが、ハートは熱く極太です。じつは、せっかくなので一回で終わるのはもあったいないと、6月15日にも同じメニューで開催することになったのです。僕の友人ばかりなので森永シェフにも気楽に行きましょうと話していたのですが、チェンチの坂本シェフも参加することを伝えると・・・えーーっ、えーーーっ、えーーーっ、って(笑)

てことで、6月15日、ふたたびDroitです。

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料理は前回と同じでしたが、僕は2回目なのでワインを変えていただきました。

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この日は、うえとの上田さん、チェンチの坂本シェフ、メッシタパーネエヴィーノの藤原さん、みそポタの床さん、人が変われば空気感も変わります。どちらも心地いい。ふらりふらりと歩くとなんとも体が軽い。

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ヒレの上に乗ってるのはブラウンスイスの骨髄です。内臓も骨も肉もすべて使い切ったすばらしい料理でした。

まだまだ続きます、次回は場所をチェンチに移して、うえと×チェンチ×サカエヤで開催予定。

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