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久しぶりに八田さんの枝肉を購入し、懐かしい写真もでてきたり、肉屋の仕事について少しだけ振りかえってみました

公開日: : 2017/04/15 コラム

写真の断捨離をしていたら2010年2月に八田さんの牛舎を訪ねたときの写真を発見。先日のセリで久しぶりに八田さんの枝肉を落札したので、懐かしさのあまりアップしてみました。

さて、2001年の9月に日本で初めてBSEが発生したのは記憶にまだまだ新しいのですが、当時は聞き慣れない言葉に日本中が戸惑い、畜産業界はどこまで落ちるのかというほど落ち込み、もらい事故のように当店も巻き込まれていくのですが、けっして交わることがなかった生産者との交流がBSEをきっかけに始まっていくのですから皮肉なものです。

BSEの翌年から、生産者と共に様々な取り組みにチャレンジしていくのですが、最初に取材していただいたのが読売新聞さんでした。ここまで遡ると一瞬自分が分かりませんでした。髪の毛もふさふさですし、いまでは考えられないセンター分けですからね。

まぁ、そんなことはどうでもいいのですが、19歳のときに肉の世界に入り、最初に勤めたのが地下の食料品売り場の一角にある肉屋でした。地上から枝肉をかついで階段を降りていくのですが、当時は真空パックのブロック肉流通はなく、あたり前のように枝肉で運ばれてきて、当たり前のように、捌き(骨を外す作業)をして、それが日常でした。捌きだけで肉屋を渡り歩いている職人さんもいたくらいですから時代の流れを感じます。

私の仕事は、来る日も来る日も先輩たちが捌いた骨をせせりながら、積み上げた肉を指さして「それがおまえの給料な」なんて冗談とも本気とも分からないことを言われながら嫌々やるのですが、数年後にたまらなく退屈なこの作業がすごく役に立ったのです。

楠本公平/きたやま南山 ミートカレッジ・ギュテロワールにて

公平がいま24歳なので私がちょうど2軒目の肉屋で修行し始めたころです。1軒目では、最初の1年で洗いもの担当からなんとか脱出して、2年目でハムのスライスを任され、ミンチを任され、安価な焼肉を任され、その間に骨をせせって、お客さんが来れば接客して、たまにコロッケも揚げながら・・・というような毎日でした。嫌な記憶がひとつだけあって、牛ヒレをスネと間違って1本すべてミンチにしてしまったてこっぴどく叱られたこともありました。まぁ、そんなこんなでなんとか辞めずに捌きもひととおり覚えたのですが、先輩の目論み通り、嫌々でも骨をせせり続けていたおかげで骨の形を覚え、苦労することなく基本的な技術を身に付けることができました。もちろん基礎ができただけで、まだまだ職人とよべるようなレベルではありません。

・・・それから数十年後

27歳で独立して、さらに牧場へ行く機会も増え、生産者とのなにげない会話から牛についても少しだけですが知識を得ることができました。よく料理人の方が産地を訪れて牛を見ている光景が雑誌なんかに掲載されていますが、いったい牛の何を見ているのか、はたまた何を感じたのか、もしかしたら行ったことで満足しているのか、いささか気になるところではありますが、私は生産者ではありませんので、肉屋としての牛の見方しかできません。生きた牛を触りながら骨の形状を確かめたり、逆に枝肉の状態から生きた牛を思い浮かべたり、枝肉を扱ってきたからこそ、生きていた時の牛の健康状態が分かったり、骨の形状から牛の大きさを想定したりと、すべてが繋がっていると思うのです。

真空パックの部分肉が悪いとは言いませんが、肉を手当てして仕上げるには、これら一連の流れに我が身をおかなければ本当においしい肉を提供できないんじゃないかとさえ思っています。もちろん自己満足かも知れませんし、みなさん持論もあるでしょうから、どれが正しいと言うものでもなく、ひとつの「考え方」にすぎないとも思っています。この歳になってもまだまだできていないことばかりでいつになったら納得できる仕事ができるのか気が遠くなりますが、おそらく一生納得はできないような気がします。

 

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