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生産者×肉屋×料理人

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豚の頭を解体するLe14eの茂野シェフ。いやぁー驚きました。パリでの修行時代に6年だったか7年だったか毎日のようにやっていたので牛の解体(枝肉から骨を外すこと)もできますよ。とは聞いていたもののこれほどとは思ってもいませんでした。かなり厳しい環境に身を置いて学んできたのでしょうね。私なんて丁稚時代に覚えが悪くて時間がかかってしまったのですが、当時の先輩が辛抱強く教えてくれたおかげでどうにかこうにか形になったようなものですからね。

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フランスではふにゃふにゃの包丁で一気に皮を剥いでいくらしいのですが、少々時間がかかりながらも茂野シェフ、お見事でした。これだけ状態の良い豚の頭は入手不可(私はルートがあるので入手していますが)で、耳、鼻、舌、脳みそ、喉と、すべてが揃っている豚の頭はほんとに珍しいのです。解体していくと細かな毛が残っているのでバーナーで焼いていきます。しかしキレイな豚の頭です。

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茂野シェフの肉焼きをお客さんが食事そっちのけで・・・という状況ではありません。この日は当社のスタッフと木下牧場の交流会です。肉を食べてワインを飲んで普段聞けないことを聞きまくるという贅沢な会です。

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生産者と肉屋と料理人が同じテーブルでこういうふうに話ができる環境を作るのが私の役割なので大いに意義のある会になりました。生産者は自分たちが育てた牛が最終的にどのような料理になって提供されているのか、どんな人が料理しているのか、その人はどんな気持ちで肉に向き合っているのか、その肉を食べたお客様の反応は・・・こういったことを知る機会ってとても大切なのです。生産者にとって牛だけをみるのではなく、その先を見なければ良い牛は育ちません。そういう環境づくりがじつは一番大切なのです。

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茂野シェフの肉に対する意識が大きく変わったのが昨年の12月です。理由は伏せますが、あきらかに肉焼きが変わりました。緻密になったというか木下さんの牛は焼き手を非常に困らせるので、その都度悩むわけです。それを1つ1つクリアしていくことが楽しくもあり、喜んでくれるお客様の笑顔や声がさらに精度をあげていくわけです。茂野シェフは、木下さんのロース、その他の生産者のロースも骨付きで管理しているのですが、自らの手で骨を外し、味に影響がでやすい脂の酸化を防ぐために、できる限り必要な分だけ骨を外すようにしています。表面も写真のように脂でコーティングしていい状態を維持しています。

余談ですが、私の場合は、出来栄えのよかった牛の脂をとっておいて、イマイチな牛に巻きつけたりしています。写真を例にとりますと、もひとつな感じの肉に質のよい脂でコーティングする感じです。ワインでもおいしかったワインのコルクをとっておいて、まずまずな味のワインのコルクと差し替えるとおいしくなると聞いたことがあります。やったことはないですがイメージとしては同じです。

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この日のオープニング肉です。左から近江プレミアム牛のツラミ、愛農ナチュラルポークのバラで作ったベーコン、近江プレミアム牛のタンです。いきなり悶絶です。

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近江プレミアム牛の骨付きロース、カイノミなどなど、などなど、などなど・・・もう許してくださいというほど肉がでてきました。茂野シェフの肉焼きは部位によって焼き方を変えています。もっと細かな話をするとフライパンに乗せる位置も変えています。よく見ていると油をアロゼする速度や回数も微妙に違います。

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カイノミですが、フライパンを手前に傾けた状態で火を入れていきます。カイノミは火の通りが早いので一瞬の勝負です。このときは私も話しかけません。ピークポイントを少しでも外せば残念な結果になることが分かっているからです。

とにかく木下さんの牛は焼くのがむつかしいです。これは何人ものシェフに言われていることですが、茂野シェフも同様にむつかしいと言います。でも、そこをクリアしたときの味たるもの鳥肌が立ちますし、クレメンティアの九里さんなんて泣いたそうですから。まさか自分が肉を食べて泣くとは思ってもいなかったって。

私の友人のワイン屋さんは、ワインはグラスと温度で味わいが変わると言います。肉も同じです。すべて焼きあがりのアツアツがおいしいわけではなく、少し冷めたくらいがおいしい肉もあれば、翌日まで冷やしてコールドビーフとして食べたほうがおいしい肉もあります。肉も温度で味わいが変わるのです。

先日こういう経験をしました。ロースとランプをオーダーした場合、同じタイミングで食べると圧倒的にロースの存在感が上回るのです。ランプはしらけた味に感じます。10分もすれば温度が下がりほんのり温かい程度になります。この時点で同じように交互に食べると、今度はランプがものすごく主張してくるのです。逆にロースは存在感を消したかのようになります。

そのときの肉の個体差や状況によるところも大きいのでこれはあくまでも一例にすぎないのですが、学びの場をどこに求めるのか、これって思いのほか重要で気づいていない方が多いように感じます。

 

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この日の私の一番肉は、このイチボです。7時間も外気にさらした肉のうまいこと。酸が強くて舌にまとわりつくような肉質、長すぎるくらい途切れない余韻。こういう肉を食べてしまうと、肉は手間をかければかけるほどなんらかの答えをだしてくれるってことを実感できます。

 

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