肉Meets × 豚肉会議 in イルジョット
公開日:
:
2014/07/10
イベント
27回目の肉Meetsは、牛肉ではなく初の豚肉尽くしとなりました。牛肉を生業にしている私にとって、果たして豚肉で参加者を満足させられるのか・・・以前なら間違いなくこう思っていました。しかし、愛農ナチュラルポークと出会い、北海道のじゃがポークと出会い … 様々な出会いが私の意識を変えました。それは豚肉そのものだけではなく、たとえば沖縄の紅あぐーの生産者、喜納さんのお家にまでお邪魔して食事を共にしたこともありました。結果、牛も豚も同じなんです。どうも豚は牛より下にみられがちなのですが、そんなことはないと証明できた今回の肉Meetsだったと思っています。
当初は5~6種類で食べ比べをやるつもりで、イルジョットの高橋シェフも引き受けてくれたのですが、最終的には11種類揃えてしまい高橋シェフを悩ませる結果となってしまいました。食べ比べて順位をつける競技をするつもりは毛頭なく、それぞれの豚肉の良さを知ってもらおうという趣旨で私なりに中身の違う11種類を集めてみました。
銘柄豚を集めだすときりがないのですが、このようなラインナップになりました。来月から当店で扱う六郎田さんのじゃがポークを筆頭に、長野の幻豚、愛知の豊川エコポーク、同じく愛知の三州豚、三重の愛農ナチュラルポーク、鹿児島からは黒豚、沖縄の紅あぐー、海外からはイタリアのドルチェポルコ、スペインのイベリコベジョータ、ハンガリーのマンガリッツア全11種類です。
それぞれに特徴があり、食べ比べるとその違いがよく分かります。ほんとうは月齢まで揃えられるとおもしろいのですが、さすがにそこまではできないので部位をカタロースに統一しました。それでも大きさの違いや脂の付き具合、霜降り度合など見た目からしてまったく違っていました。これらが味にどう影響してくるのか、ほんとうに楽しみです。シェフは大変ですが・・・。
1皿目は、しゃがポーク、幻豚、黒豚のリエットです。まったく同じ作り方なのにこうも味が違うのかと驚きです。
2品目は、三州豚、SPF、イベリコベジョータのボイルハムです。ちなみにSPFは無菌豚だから生食でも大丈夫だと思っている方が多いようですがとんでもない、どこからこのような間違いが起こったのか、SPFはSpecific Pathogen Free「特定の病原体をもっていない」という意味の学術用語です。豚の発育の障害となる5つの病(マイコプラズマ肺炎、豚赤痢、萎縮性鼻炎、オーエスキー病、トキソプラズマ病)を持っていません。ということでSPF豚は自然環境下で飼育されているので、一般細菌は保持しています。まったく無菌の豚は特殊な装置の中でしか飼育することはできません。こういう正しい情報を知ってもらうことも肉Meetsをやっている目的の1つでもあります。調べると、SPFの適切な日本語訳が見つからないのと、一部のマスコミで「SPF」と「無菌」を混同して報道したのが誤解を生じた原因のようです。
3品目は、愛農ナチュラルポークと紅あぐーのサルシッチャです。すごい競演です。
4品目は、豊川エコポークとドルチャポルコのカツレツです。できれば分厚いトンカツが食べたいです。
そして、メインは高橋シェフお得意の全11種類炭火焼きです。
結論をいうと、結局は好みの問題だと思うのです。たとえば私は好みじゃない豚でもおいしいと感激している人がいましたし、ワインと一緒に食べると味が変化しますし、またワインの種類によっても違ってくるだろし、なにを合わせるかもおいしく食べる要素だと思うのです。だから、自分の口に合った豚肉を探すことが大切で、せっかくなら見つけた豚肉の背景も知ってほしいのです。
ちなみに、この日のワインは、ワイナリー和泉屋の新井治彦さんが協賛くださった「Xuntanza Meno 2010 Forjas del Salnes」というすばらしいワインでした。しかも、ガリシア語で『出会い、満足させること』を意味する言葉だそうです。肉Meetsの意味も「出会い、つなぐ」ですから、偶然なのか必然なのかピッタリでした。
今回の肉Meets、じつはマッキー牧本さんとの共催で、マッキーさんの知人も数名参加され新しい出会いがありました。食でつながる出会いはいつもうれしくて貴重です。いつもなら締めの挨拶をしっかりやって解散となるのですが、今回は高橋シェフのすばらしさに呆然となって締めることを忘れていました。しかし、参加されたみなさまは大満足でした。締めの挨拶をマッキーさんにと思っていたのですが、こんな感じですいませんでした。
高橋シェフはじめイルジョットのみなさま、ありがとうございました。
後日、日本味育協会の宮川順子先生がすばらしい感想を書いてくださいましたのでシェアさせていただきます。
【豚肉会議】11種の豚を食べ比べ
食肉のおいしさを決める要因は大きく3つ。
品種(血統)、餌、環境。
生き物に生まれながらに備わっている特長と、何を食べていたかと、どのように生きてきたか、すなわち生き様がそのまま味になる。
豚肉はアルファベットでその血統を表す。例えばLWDならば、胴長なので長いロース肉がとれるランドレース(L)、肉量が多く繁殖力が強い大ヨークシャー(W)、小型だが体質が強健で飼いやすい品種デュロック(D)の3種を掛け合わせた、という意味。これがいわゆる三元豚で市場に出ている多くはこれ。気候や施設に合わせて交配されるわけだけど、食味には思ったほどの影響がなかった。
肥育されている豚さんたちの餌は配合飼料やトウモロコシが中心ですが、サツマイモ、うどん、そば、パンくず、菓子くず、ナッツ、インスタントスープなどを食べているのもいるし、放牧されているものは、インカのめざめやかぼちゃ、てんさい、どんぐりなんかを食べているそうで、脂身の口溶けや香りに違いが出ている感じ。
そして一番味に影響があるのではないかと思われるのは、意外にも肥育環境、すなわちストレス度!!厩舎で飼われていても放牧でもストレスのない豚は、うま味が濃く、かみ締めるほどに味が出て後味にまろやかな甘味が残る。そして、最後に評価を分けたのが肉の雑味。
リエットやボイルハムなど低温では獣くささは邪魔で、脂の口溶けと雑味がない濃いうま味が勝負の鍵。
しかしローストなど高温になると、脂はコクと香ばしさがポイントになり、焦げ味(苦味)やワイン(酸味)との相性で雑味や獣くささが活かされ、餌や品種で残る豚独特の雑味や獣くささは、女性or男性、お酒と楽しむかで意見が割れた。また、ローストだと運動量の多い放牧系がイノシン酸(多分ATP量)と赤味のもつ酸味のバランスで優勢になった。
本日のNO1はこれです!!なんて簡単に決まるほど簡単じゃなく、肉質と調理法に合った肉を原価率を考慮した上でどの肉を選ぶか?
この上なく楽しい迷宮にはまリましたね。
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