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脂の溶ける温度、融点が低いからサシ肉がたくさん食べられるということでもないと思うのです

公開日: : 2017/06/18 コラム

先日のセリで購入した近江牛。いつもはA3狙いで枝肉を選定するのだが、サシの多い和牛で育った私としては、たまにこういう肉が欲しくなる。なんといっても脂量が多いので扱いやすい。逆に赤身が多い肉は水分も多く、酸化するスピードが早いのでロス率が高い。このあたりは技術的な問題や店ごとの考え方もあるでしょうし、精肉店と飲食店の違い、仕入れ量にも関係してくるかと思われます。

さて、個人的な好みのお話しをすると、サシの多い肉は試食以外では口にすることがほとんどありません。なので外食でサシ肉を食べることもありません。仕事の延長のような食事会で「たまにはA5の肉もおいしいですよ」と勧められることもありますが、もちろんおいしいのは分かっていますが好んでは食べないですね。それと、最近は一般の方でもプロ並みに牛肉に詳しい方がいらっしゃいますので、そういった影響もあり新しい牛肉文化が芽生えつつあるようにも感じています。

ところで、「融点」ってご存知ですか?。牛肉を語るとき、特に畜産関係者や飲食店の方がサシ肉と融点について話している場面に出くわすことがありますが、「この肉は融点が低いからくどくない」とか「うちの肉は融点が低いからいくらでも食べられる」といった感じです。サシ肉は柔らかいを通り越して「溶ける」とか「とろける」が代名詞みたいになっていますが、このとろける温度(脂がとける温度)のことを融点といい、融点が低いとまろやかで口当たりが良いと言われています。さらに融点は、不飽和脂肪酸の割合に大きく関わりがあり、不飽和脂肪酸含量が高いほど、融点が低い傾向がある、なんてことはインターネットで検索すればいくらでもでてきますから、牛肉に興味がある方ならわざわざ説明しなくとも言わずとも知れたこともしれません。

さて、融点が低いと食べやすいという理屈は分かりますが、実際はどうなのでしょうか。融点が低いかどうかなんて感覚的なもので売り手の都合のような気がしないでもないのです。だって証明するものがありませんからね。測定器を使えばわかりますが、それとてものすごく手間がかかるのです。脂を100℃の乾燥状態にしてつぶしてからろ過し、抽出した液を冷凍してから測定器を用いて1分間に2度づつ温度を上昇させ、何度で溶けるかを測定していくのです。ね、手間でしょう。そもそも測定器なんて持っている精肉店は見たことないですからね。

それと私が前々から感じていることがありまして、それは一昔前から比べて脂の質が変化しているという点です。これは格付けにも関係することなのですが、サシを追い求めた肥育をするようになってから肉の見栄えは良くなって味は後退しているように思うのです。肉のおいしさはテクスチャーではなくフレーバー、つまりどれだけ余韻を長く残せるかだと思です。

融点がどうこうより、どうすればサシ肉をおいしく食べることができるのか。塊で焼くより薄くスライスしたほうが重さは軽減しますが、それでは偏った料理にしか適していないことになりますから、炭で焼くのか、フライパンで焼くのか、そのあたりもおいしく食べるためには重要なポイントになってきます。

まとめますと、融点が低いから食べやすいのではなく、個体差でブレた肉でもそれをおいしく仕立てるのがプロの仕事だと思うのです。サシ肉であれ赤身肉であれ、料理法と食べる量によっておいしさは変化しますし、そのあたりを肉のせいにするのではなくしっかり手当てしておいしく仕上げていければと精進の日々です。

 

 

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