枝重390kg、20ヶ月齢で出荷の近江牛は僕好みですばらしい肉質だった
先日のセリで落札した近江牛。枝重390kgで20ヶ月齢での出荷は畜産関係者ならお分かりだと思いますが早すぎます。通常だと28~30ヶ月での出荷ですから、なにか問題があったのでしょうね。たとえば牛が死にかけているとか。キレイごとではなく死んでしまっては元も子もありません。生産者は次の牛を買うたまに、生活していくために、牧場経営を持続していくためには1円でも高く売らなければいけないのです。だから死んでしまっては元も子もありません。命あるものですから死もあります。僕もたまたま牧場を訪問していて死に直面したことも1度や2度ではありません。
もともと小ぶりな但馬系なので390kgは珍しくないのですが、20ヶ月齢の出荷は早すぎます。このあたりは公開されない情報ですが、僕は気になると考えすぎて微熱が出るのでセリ前に生産者にしっかり聞くようにしています。もちろん懇意にしている生産者の牛しか買わないので聞きやすいですし、相手も話しやすいということもあるのでしょうが、「この子は産まれた時から脚が弱くて、起き上がるのにも時間がかかり、ここ最近は特に寝たままの状態が多かったのです。このままだと命に関わる事態になる可能性があったので早めに出荷しました」とのことでした。生産者はこういう判断も大事ですね。
そんな訳ありの子でしたが、枝肉は瑕疵もなく格付けもA3で僕の好みでした。命あるものですからいろんなドラマがあります。それを受け継ぎながらどうやったらおいしくなってくれるのか、四六時中そればかり考えています。僕の周りにいる料理人の方が料理のことばかり考えているのと同じように1つのことに狂わないといい仕事はできないですね。
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