宮川順子先生のホルスのヒレを使った海苔牛カツ
公開日:
:
2016/12/11
店・料理人

Tボーンステーキを作るときに、どうしてもヒレ先(テート)が余ってしまう。これが近江牛なら店頭でも売れるのだが、もともと業務用としての販売を目的として作ったため、コスト的にホルスタインのロースを30日ドライエイジングしたものを用いている。
それで、余ったヒレ先をどうしているのかと言うと、ほとんど自己消費かわくわく定期便でお知り合いの方に入れてる感じなのです。わくわく定期便の会員様全員に入れるとすぐになくなるのですが、さすがにサービスといえども、余計なことをしてクレームになる可能性が少しでも予測できる以上、あくまでもお知り合いのみ。
年末を迎えて冷凍庫にスペースを作らなければいけない関係上、ヒレ先が溜まってきたので日本味育協会の宮川順子先生に送ってみた。こういうときって送る相手も考えてしまうのです。宮川先生なら阿吽の呼吸で安心です。逆にどんな料理にしてくれるのか気になるところでもあります。あくまでもホルスのヒレでそれも冷凍で保存しておいたものですから旨みは抜けきっています。余分な水分はバリアシートで2日かけて抜いたのでしっとりしていい感じでにはなりました。
さて、旨味が弱いヒレがどんな料理になったかと言いますと・・・
以下、宮川先生より。
うま味を強める手法の基本は「アミノ酸の相乗効果」です。
20種類のアミノ酸の中で、うま味として特に重要なのは、グルタミン酸(アスパラギン酸)で、肉類に多く含まれるイノシン酸、又はキノコに含まれるグアニル酸と合わせると、1+1が2ではなく7~8になります。※ちなみに貝類に含まれるコハク酸は相乗効果には影響しない。
家庭でてっとり早くうま味の弱い肉をおいしくするには、グルタミン酸の多い食品と合わせること、と
うま味を閉じ込めることです。
▼グルタミン酸が強いことで知られている食材
昆布、トマト、白菜、玉ねぎ、海苔
パルメジャーノレッジャーノ、
発酵調味料、酒類、骨の出汁、あさり貝など
相乗効果の手法としては、
①肉に下味としてグルタミン酸と合わせる。
発酵調味料(みそ、しょうゆ、ソース)
麹系調味料(塩麹・醤油麹・甘酒)
昆布(昆布茶)などを塗して数時間おく。
②グルタミン酸が多い野菜、海藻、チーズと合わせて加熱する。
③グルタミン酸を抽出した出汁(野菜・鶏ガラ・あさり)
又は、酒類でさっと煮る
トマトやアスパラは春が旬の食品なのでボツ。
柔らかいフィレ肉なので、調理法は短い加熱にする。
以上から、
①味噌漬けフィレと玉ねぎの串揚げ
②ロール白菜でさっと煮
③薄切りフィレと根菜の治部煮
④バルメジャーノ焼き
⑤海苔牛カツ
など考えてみた。
若者が遊びに来ていたので⑤を採用、ついでに豚フィレで④も作ってみました!
好評でした。

なんともすばらしい!私は単純に焼いただけのものを食べてみましたが、残念ながら旨みの抜けたヒレはおいしくなかった。柔らかいだけなのでソースでも合わせればそれなりにおいしくなってくれたのでしょうが、そんな技術もなく・・・でも、次回はカツにチャレンジしてみたいと思います。
さて、宮川先生の授業が好評すぎていつも定員オーバーになる味育のマスターコースですが、来年度のスケジュールが決まりました。料理を根底から勉強したい方にオススメです。
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