肉質は餌の影響が大きく、ストレスは環境によって変化し、これって人間と同じことですね
公開日:
:
2016/08/06
近江牛, 格付け, 牧場・生産者, ジビーフ(完全放牧野生牛), 店・料理人 完全放牧野生牛ジビーフ
今朝はジビーフに愛農ナチュラルポークに、平かしわに先日のセリで落札した近江牛にと、バタバタと一気に入荷があったのでした。
ありがたいことに平かしわは入荷前に予約で完売、ジビーフもほとんど予約で完売、愛農ナチュラルポークも同じくで、出荷頭数が少ないとはいえ完売するとホッとします。牛や豚を一頭売るって結構大変で、正直ボックスミートで好きな部位だけ問屋さんから仕入れている方が楽ですよ。効率もいいですし計算しやすいですからね。
しかし枝肉で育った私としては、どうしても骨付き肉にこだわりたいのです。ナマがいいとかパックがいいとか、そこを議論するつもりもなければ押し付けるつもりもありませんが、やっぱり枝肉に肉屋らしさというか、本質を感じてしまうのです。いまだに枝肉を担いだり、骨を外したりの重労働は体力的にも年々キツくなる一方ですが、私にとっては味返り(みかえり)が大きいからしんどくてもやめられないのです。おそらく私と同年代の肉屋さんできっちり修行した方は、こういった考え方の人けっこういるんじゃないかな。枝肉を使っているいないは別として・・・
写真は、ラシームの高田シェフによる作品です。シェフは奄美出身で、故郷を離れていてもできる限り奄美を含めた鹿児島の食材をたくさん使いたいということで、この日のお肉も指宿で生まれ育った経産牛をご用意させていただいたのでした。20日程度ですが枯らして水分を飛ばしましたのでほどよくまとまりのある肉質に仕上がりました。赤身が詰まった健康的な食感で予想通りおいしくてシェフとの相性も良好のようです。
こちらは、山形牧場さんの近江牛で、格付けはA5です。私にしては珍しく先週のセリでA5を買ってみました。普段は滅多なことではA5には手を出さないのですが、あ、けっしてA5が嫌いなわけではありませんよ。ただ、私の中で持論と言うか規定のようなものがあって枝肉は500kgまでと決めているのです。近江牛でたっぷりサシが入ったものは重量が半端なく大きくて私としては扱いにくいのです。ですから、今回のように枝重が400kg前後で知り合いの生産者のものだったら買うこともあるのです。枝肉が大きいものが好きな方もいますし、私のように小ぶりなものが好きな方もいますし、こればかりは好みですから正解もなければ不正解もないわけです。
重要視したいのは見た目ではなく「味」なわけですが、長く肉を見続けていれば食べなくてもだいたいは分かるものです。この肉もそんな感じです。その「味」ですが、一般的には、「品種、血統、環境(育て方)、餌」の4つが重要だと言われています。ご存じの方も多いと思いますが、肉牛ですばらしい結果というのは1つの指標としての格付けです。わかりやすくいえばA5になるかならないかです。この段階では味は関係ありません。さらに、生産者(主に肥育農家)が最も重要視しているのが血統です。血統でほとんど決まってしまうとさえ言い切る生産者もいるくらいです。
逆に意外に思うかも知れませんが、「餌」は重要視されていないのです。もちろんこだわっている生産者もちゃんといますよ。逆に農協にまかせっきりという生産者もいます。けど人間と同じように食べるものの影響力って結構あると思うのです。
たとえばジビーフ。写真は今朝入荷したばかりの「ごとうさん」ですが、相変わらずサシ1つない肉質です。※ごとうさんという名前は10桁の個体識別番号から語呂合わせでつけているらしいです・笑
牧草で育つジビーフの肉質は毎回このような感じですが、間違いなく餌の影響だと思うのです。濃厚飼料をたっぷり与えればこうはならないでしょうね。
ジビーフ「ごとうさん」の成績はこんな感じ。
生産者(西川奈緒子さん)からのメッセージ↓
こじんまりとしていたので枝重はやはり小さいのですが、
まぁ、等級はB-2ではなく、相変わらずのB-1なので
西川奈緒子さんから7月26日に届いたメッセージ↓
食欲旺盛、こじんまりコロンと太った『後藤さん』(NO.2150、25ヵ月令♀)を出荷しました!ちょっと体長が短いからか、コロンといい感じに太って見え、毛づやも良く黒光りしてひときわ目立ってました!温厚で、誰が行っても動じず、ひたすら草を食む姿はジビーフの鏡でした!(笑) 今月初めにル・セヴェロの柳瀬シェフとウィリアムさんがご訪問くださった時も、他のジビーフは警戒して離れて行くのに対し、後藤さんはウィリアムさんのすぐ後ろの草を食べ続けていて、次回はこの子なので宜しくお願いします!と言ったのでした。
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