霜降り肉をあっさりとした食感に仕上げるために
公開日:
:
2015/02/21
近江牛
むかしの肉ってこんなにサシが入ってたっけ?… 数日前に同業者の方と話したときの会話ですが、たしかに私が修行していた頃はいまほどサシにこだわりはなく食べ過ぎて胸焼けした記憶もなく、それは私が若かったからとかではなく、牛肉に対する価値観が変わり、牛が変わり、日本人の嗜好が変わり、なによりも牛づくりが大きく変わってきた結果だと思うのです。
ダイエットや糖質制限の影響もあり、赤身肉がもてはやされていますが大人だけではなく子供たちも霜降り肉を敬遠する傾向にあるようです。とはいうものの和牛で上質なものを望むのなら少なからずサシは入るわけで、和牛とはそういう作り方をしているのです。
和牛の生産者はサシを追求し、サシが多く入れば格付けもよく高く売れるわけです。ビジネスですから1円でも高く売れるように努力してあたりまえです。だからこそ生産者はA5を目指した肥育をし、その結果、A5の発生率は年々増加傾向にあるのです。A5になれなかった牛はA4になり、さらにはA3に評価されるのですが、同じ生産者が同じように育てても血統や個体差によって出来上がりが変わってきます。
しかしながら、ここにきて生産者と消費者のズレを非常に強く感じるのです。生産者はサシを追求し消費者は赤身を好む傾向はズレというより溝なのかも知れません。国内で霜降り肉が売れないから海外へという動きも活発になりつつあります。
そもそも消費者は和牛で赤身を求めること自体が間違いではないのか?… 少し飛躍しすぎた考え方かも知れませんが、格付け評価の高い肉はモモにもサシが入ります。スネ肉にだってサシが入ることがあります。品種改良が進みサシを入れる技術が向上した結果ではありますが、そこに消費者はいないのです。
実際に、赤身肉という括りだけでみると、輸入牛肉なんて赤身の代表のようなもの。最近の輸入牛肉は味もよく料理の仕方でかなりおいしくなります。今後ますます赤身ブームが強まることを考えれば霜降り一辺倒の和牛も見直す時期なのかも知れません。そして格付けとは異なる新しい基準が必要だと思うのです。
ちなみに、私も食べるなら赤身で、霜降り肉はすき焼きでロースを1枚食べるくらいがちょうどいい感じです。
写真はA4のサーロインですが冷蔵庫で30日経過したものです。と畜後7日で枝肉から切り出して試食したときは霜降り肉特有の重さを感じました。肉は旨味で溢れていたのですが食べ進めるとどうしても胃袋が締め付けられます。
私ができることといえば、どうすれば霜降り肉をおいしく食べられるのか。旨味を残したまま少しでもあっさり仕上げるにはどうすればいいのか。これに尽きるわけです。骨付きの状態で吊るす場合もありますし、少し高めの冷蔵庫で乾燥させる場合もあります。和牛を扱っている以上、どうしてもサシは入ってしまいます。ならばおいしく食べられるように肉質を変化させるのが私の仕事であり、変化を見逃さないためには日々の観察がかかせないのです。
食べ過ぎるとやはり重くなりますが、と畜後7日目のフレッシュな状態で食べた時よりも、かなりマイルドで口当たりもよくなっていました。これ以上寝かせる意味もないので本日より販売開始です。
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