牛肉相場が大変なことになってます
おいしさの基準なんて人それぞれですが、すき焼きやしゃぶしゃぶで食べるにはどうしても肉の深みと言いますか「コク」が重要だと思っています。それと「香り」です。この2つを兼ね備えた牛肉となると和牛しかないかなと思うわけです。和牛の香りには2種類あって捌きたての生の香り「生鮮香気」と、もう一つが加熱調理したときの「加熱香気」です。
と畜から枝肉になり、すぐに捌いて精肉にした場合、生鮮香気はしますが、加熱すると肉の味がしないことが多々あります。「コク」を感じないというか味が乗っていないのです。そのために10日~30日程度、「寝かせる」のですが(これも広い意味では熟成と言います)、そうすることによって「加熱香気」が向上されます。
あくまで私の好みですが、ステーキや焼肉にするとサシが邪魔してあまりたくさん食べることができませんが、すき焼きやしゃぶしゃぶにするにはこれくらいサシが入っていたほうがおいしいですね。サシが多い肉を売り文句として、雌牛だからとか融点が低いからとか、エサにこだわっているとかいう理由であっさりしていくらでも食べられるというような表現をする方がいますが、そんなことないです。もちろん2~3切れならおいしく食べられますよ。しかし、サシは脂ですからたくさん食べれば胃もたれして当然です。私の友人で還暦超えても脂でコテコテのバラを4~500g食べる猛者もいますが、これは例外で一般的には厳しいと思うのです。ならば赤身肉はどうか・・・
これも人それぞれですが、今年は赤身肉がブームでした。メディアからの発信もステーキや焼肉ばかりですき焼きやしゃぶしゃといった鍋物は少なかったように思われます。私もステーキなら赤身肉が好みですが、先にも書いたようにすき焼きはサシが少し入ったぐらいがおいしいと思っています。
このように、料理によって赤身か霜降りか、はたまた部位なのか・・・使い分けるのも楽しみの1つだと思うのですが、その牛肉がえらいことになっていまして、牛肉の相場が過去最高の高騰続きでどうやら来年以降も続きそうな気配なのです。飲食関係の方は度々の値上げのお知らせに頭を悩ませていることと思われますが、近い将来、和牛は一昔前のように正月など特別な日にしか食べれないということにもなりかねません。
本当にえらいこっちゃなんです。食肉全体が歯止めがきかない高値で推移しているのですが、特に和牛は飼養頭数の減少が大きな原因となっています。その1つが繁殖農家さんの高齢化なのです。例えば70歳とか80歳の繁殖農家さんが転んで骨折でもしようものなら、そのまま廃業なんてケースも実際にあるんです。飼ってる頭数は20頭とか30頭だとしても、それが100軒とか200軒ともなれば全体に与えるダメージは相当なものとなります。私たち肉屋がもっとも影響している枝肉相場も高騰に歯止めがきかない感じですが、じゃー肥育農家さんが儲かっているのかといえばそんな簡単な話でもありません。肥育の前段階、つまり仔牛を市場に出荷する繁殖農家さんの減少だけではなく、後継者不足などもあり、飼養頭数が増えなければまだまだ高騰が続いていくのです。
しかしながら個人レベルではどうしようもなく、解決の糸口は見えないのですが、かと言って目の前の肉に語りかけても答えは見つからず、私ができることは肉屋らしく、おいしく仕上げることに尽力するのみです。てことで肉屋はこれからが本番です。
関連記事
-
-
ニーズはサシ志向から赤身志向へ
先日の朝、友人から電話がかかってきた。 急やけど高校のツレが集まるので来れるか?
-
-
価値あるプライオリティ
食肉市場では、毎週月曜日と木曜日に近江牛のセリが開催される。 だれでも参加できるわけではな
-
-
褒められたい生産者、喜ばれたい生産者
撮影:中塚麿美[/caption] 今日はある雑誌の企画で、さかえや店舗
-
-
レアステーキタタキ風
生食用牛肉の新たな規格基準が10月1日に施行されてから 約1ヶ月がたった。 各都道府
-
-
田野畑山地酪農「志ろがねの牧」のボス牛「シチロウ」肉になる
きたやま南山の元店長、春菜ちゃんの嫁ぎ先、田野畑山地酪農(岩手県)にシチロウという名前の種雄牛がいる