215ヶ月齢のかおるさん肉になる
215ヶ月齢18産という偉大なお母さん(以下かおるさん)牛。先月、木下牧場を訪ねた時、Le14eの茂野シェフ(以下シゲさん)によくなついていた。シゲさんもこの牛が気になるようで頭を撫でては牛の目線までしゃがみこみ心で会話しているようだった。
この時点でかおるさんの出荷が決まっていた。もうこれ以上は子を産めないから肉になってもらうのです。肉牛は愛玩動物ではないので27か月~30ヶ月育成して食肉になります。お母さん牛は子を産めなくなると肉付きをよくするために再肥育する場合が多いのですが、木下牧場では私の意向もあって再肥育は一切せずに枝肉になったあとは私にすべて任せてもらっています。
枝肉になったかおるさんですが、18産したとは思えないほどすばらしい肉質です。私は成牛から見続けていたので感慨深いものがあるのですが、余韻に浸っている暇もなく、どうすればおいしくなってくれるのか。だれに託すのが最良なのか。いろんなシェフの顔を浮かべながらとにかく大切に扱っていきたいと思うのです。
経産牛は水分量が少ないので長期間枝肉で吊るさずに7日程度冷蔵庫で落ち着かせてから骨を外す作業に入ります。今日は試しにウデを捌いてわくわく定期便の会員様用に入れさせていただいたのですが、肉を触った感じでは今の時点でもポテンシャルは高いように思いました。ウデをスライスしていくと「みすじ」が残るのですが、こちらも早速シゲさんに届けたのです(営業に出せるほども量がないので謹んで明日私がいただきます)
シゲさんが肉に合わせるワインは、きれいな酸のあるジューシーなワインが多く、私がレストランと肉をマッチングさせる場合は、このあたりのペアリングも重要視しています。とはいうもののそれほどワインに詳しくないので飲んでおいしければいいのですが肉も同じですね。食べておいしければその人にとっては「おいしい肉」なので、どこに価値を見いだせるかだと思うのです。目に前の肉、肉の背景、作り手の顔、いろいろあると思うのです。シェフがイケメンというだけでも、もしかするとおいしく感じるかも知れませんしね。
話を戻しますが、牧場で出荷間際のかおるさんに触れ、実際に肉となって目の前にあるかおるさんを見てシゲさんはなにを思うのだろうか。シゲさんに限らず、私の肉を扱ってくださるシェフのみなさんは少なからず牧場に足を運んでくださいます。目の前の肉と牧場で触れた牛とは記憶が繋がっているはずなんです。そのときシェフのみなさんは何を思うのでしょう。
殺生と供養は相反するものです。それを理解し料理に反映することなどできないかも知れません。しかし、生きた牛に触れ、目の前の肉を触り、大切に料理するという心が人を感動させる料理につながるちょっとした差だと私は思うのです。
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