枝肉吊るしでおいしく仕上がる方法
写真は近江プレミアム牛ですが、3月5日に冷蔵庫に吊るして16日目。せめて今月末までは吊るしておきたかったのですが、某シェフが骨付きのままゆっくり使いたいとのことなのでリブとサーロインを切断して送りました。徐々においしくなっていく肉質なので食べ頃に伺いたいと思います。
吊るしは私が修行時代から行っていた方法で、枝肉世代の肉屋さんから見ればなにをいまさら的な感じだと思います。ただ、近年の牛肉事情は圧倒的に枝肉流通が減少し、真空パック流通が主体となっているので、ある意味新しい技法といえるのかも知れません。
むかしの肉はおいしかったが今の肉はおいしくないとよく言われます。私もそう思っている1人です。飼育方法が変わったということも大きな理由の1つですが、なによりも肉屋が枝肉を仕入れて自店で骨を外さなくなったのが大きな原因だと思います。枝肉が主流だったころは、普通に冷蔵庫に吊るして適度に水分を抜きながら使っていたわけです。そのときはあたりまえだったので特別なにも感じることはなかったのですが、いま思えば理にかなっていたのでしょうね。
牛肉のおいしさには水分量が関係するわけですが、たとえば熟成肉を例にとると、肉の中には「結合水」と「自由水」がありますが、熟成に必要なのは自由水です。肉に風をあて湿度を調整しながら自由水を蒸発させて肉の表面に微生物を付着させます。微生物が活性化するには水分が必要ですから霜降り肉より水分が多い赤身肉が向いていると言われるのはそのためです。ただ私の経験では、水分量が多すぎても微生物はつきにくく、逆に少なすぎると旨味に欠けたりと、このあたりが経験と知識、そして個体差を見極める眼が必要なのだと思います。
吊るしの話に戻りますが、ドライエージングビーフも枝肉吊るしもカテゴリーとしては熟成です。違いは肉に風を当てるか当てないか。強制的に微生物を付着させるのか自然にまかせるのか。このあたりですが私は少し変わったやり方をしています。ちょっとここでは書けませんが水分の抜き方がポイントです。
うまく水分が抜けると食べたときの余韻がピュアな赤ワインのようになるのです。もちろん個体差によって出来上がりにバラつきはありますが、あ、部位によっても違いますね、あと火入れにもよります。すべてのタイミングが合致しなければ100にならないので、70とか80あたりを常にキープできるようにしたいですね。
そういえば先日、税理士先生に牛の原価を聞かれたのですが、正直わからないときがあります。枝肉を仕入れたときの原価はわかりますが、そこから手をかけていくので原価なんてわからないんです。だいたいこれぐらいかなぁ、って感じでやってますからね。経営者としては失格ですが27年潰れずになんとか会社は存続しているので帳尻は合ってるのでしょう。なんて呑気なことを言ってたらまた税理士先生に怒られそうですが(笑)
でも、いいものを作りたいと思うと数字を意識しすぎるとできないんです。一応頭はよくないですが社長ですし利益をあげて数字を残していかないとダメなのですが、お金が好きな社長にはなりたくないなぁと常々思ったりします。売り上げより内容かな。
さて、明後日はLe14eで肉Meetsです。通常営業ではださないあれこれ特集です。5月はパリで肉Meetsやりますが4月が予定なしです。ご希望のシェフがいましたらご一報ください。
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