育てた人、屠畜してくれた人、精肉にした人、関わった人すべてが連携しているのです
公開日:
:
2013/12/15
近江プレミアム牛
facebookの画面をキャプチャしたものだが、生産者の木下さんとのやり取りがじつにおもしろい。近江プレミアム牛については何度も書いているので詳細は省くとして、まず驚くのはスライス時の手触りが他の肉とまったく違うのだ。
通常の雌牛の肉は融点が低いため、脂が手に浸透するようなイメージだが、近江プレミアム牛は脂が溶けるような感覚はない。そのため手が脂でベトベトすることはなく、どちらかといえば去勢牛の肉質に近い。このあたりはおそらく肥育日数によるものだと推測される。
和牛の場合、脂肪交雑をしっかりつけるために肥育期間が30か月前後と長めに設定しているのだが、近江プレミアム牛は24か月で仕上げている。
通常の牛とライフサイクルがまったく異なるため比較するようなものでもないのだが、濃厚飼料を与えて増体し肉にサシを入れる育て方をしていないのが主な特徴だ。自家産の粗飼料と国産飼料だけで育てている。
同じように育てていても個体差があるので肉質が変わってくるのだが、近江プレミアム牛に関しては、比較的あっさりとした味に仕上がっている。かと言って肉がパサついたり味気がないというマズさは感じない。むしろ日を追うごとに凝縮している旨味が広がる感じがあり、イメージとしてはシンプルでありながらコクがある味わいといったところだ。
肉をカットしていると、ついつい端切れを口に放り込んでしまう。表現が適切ではないが近江プレミアム牛は微かな酸味を感じる。これはあきらか酒粕を与えている影響が肉にでているのではないだろうか。そのあたりは詳しくないので分からないが、しばらく冷蔵庫内で寝かせておくと不思議と酸味が消えてまろやかさを感じるようになる。
本日発送分の超吟選すき焼き用には近江プレミアム牛をスライスさせていただいたが、これほどワクワクしながら肉をスライスすることは久しぶりだ。自分用に少し購入したので早く家に帰りたい心境だ。
近江プレミアム牛の飼養に関してはかなり高くついている。大半が飼料代だが輸入飼料を一切入れていないのでこれは仕方がない。ただ、仕上がり価格も当然ながら高くなるので精肉の販売価格も高くなる。このあたりをご理解いただいて購入していただける方はいったいどれくらいいるのだろうか、、、、というのが当初からの課題であった。
まずは飲食店ですが、引き合いが強く使ってみたいとお問い合わせいただくのですが、価格面でむつかしいお店がほとんどです。それでも共感していただける料理人たちは利益を考えずに心意気だけで使っていただいているようです。その先には安心安全は当たり前の基準と捉えお客様の健康面を最優先にという考え方があるようです。
ただ、相対的価値という観点からみれば市場における存在価値、つまりポジショニングの確立に優位的な商材と言えるのではないでしょうか。
一般消費者のみなさまに関しては、ネットでの販売を中心に少しずつ販売を始めていますが、ハッキリ申し上げて安くはありません。安価な牛肉をどうこう言うつもりは毛頭ありませんが、こういった牛肉が1人でも多くの方に評価していただけるよう発信し続けることが私が生産者の代弁者としてできることであり、継続することで消費者の方が少しでも正しい牛肉の知識を得ていただければと思っています。
冒頭で紹介しているfacebookの画面から
木下 その美
わ!美味しそうです。
私、感動してます。
新保 吉伸
「ゆきちゃん」が育てて出荷し「なお」が屠畜して枝肉にし「新保」が捌いて精肉にした
近江プレミアム牛。これでおいしくなかったらあかんやろ(笑)
木下 その美
ほんまや!
ナオも、さばいていて他の肉と違うからすぐわかると言うてました。
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