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イブ=マリ・ル=ブルドネックに学ぶフランスの食肉事情

公開日: : 2015/01/23 イベント

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ジビエ会議の翌日は、「熟成肉、日本とフランスの違い」というタイトルで私が、「肉業界の未来~人材育成カリキュラム」タイトルでイブマリが話しました。さらにイブマリによる骨抜き実演も披露。これは盛り上がりましたね。日本式とフランス式では捌き方が違っていて私も勉強になりました。すき焼きやしゃぶしゃぶなど薄くスライスする技術は日本が長けていますが、塊肉を扱う技術はフランスのほうが長けているように感じました。

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関係者の方はお分かり頂けるかと思いますが、私たちの捌きではこのような包丁(というのか?)は使わないです。フランスの肉職人がすべて使っているのか、それともイブマリだけなのかは分かりませんが、単純にこの包丁欲しいと思ってしまった方多かったんじゃないかな。男子はこういうの好きですからね(笑)

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イブマリは関節を切るときと骨肌を付ける作業の時に使っていましたが、日本でも骨肌を付けるやり方は存在します。ただし捌き包丁(短刀)でやります。専門すぎて関係者にしか理解できない話かも知れませんが記録のために書いておきます。私がこの業界に入ったころはいまのように真空パックの技術もなく枝肉を捌いて精肉にする方法があたりまえでした。いまでこそ真空パックにすれば賞味期限は30日程度は持ちますが、むかしはいかにナマの状態で日持ちさせるかを考えたものです。その1つが骨肌をつけて捌くという方法です。

表現が難しいのですが、骨の薄皮を肉につけて膜を作るようなイメージです。こうすることによって腐敗を遅らせる役割をするのです。もちろん手間もかかりますし技術もいります。急ぎ仕事のときなどはやってられません。ただ、こういった技術が最近は見直されつつあるのかなと、根拠はないのですがなんとなくそのように感じています。

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私は丸い研ぎ棒を使っていますが、イブマリの研ぎ棒は平べったい形をしていました。先ほどの続きですが枝肉を使うにはそれなりの技術が必要です。イブマリも骨肌を付けることで長期熟成が可能だと言っていましたが、骨を取り除いたあとの肉は腐敗へと進んでいきます。骨を外すという行為は、言ってみれば肉に傷をつけることなので当然ながら腐敗へと進むのです。ただし骨肌を付けることによって腐敗を遅らせることができます。

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この形状をご覧いただければ日本式と違うことがお分かり頂けると思いますが、簡単に言ってしまうと、完成系は骨を手で持って分厚い肉の塊を食べるイメージです。このやり方は「カブリ」を先に外してしまうので、リブロースをすき焼き用として販売している場合はロスになります。イブマリはカブリをバーガーに使用していると言っていましたが日本だと切り落としとか焼肉あたりかな。

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私もやりましたよ。骨1本だけですが(笑)
汗1つかきませんでした… あたりまえか。

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さて、ここからが本題です。今回イブマリが京都に来た目的は「人材育成カリキュラム」の発表です。昨年、パリでイブマリにカリキュラム内容を聞かされた時に私たちがこれから取り組もうとしているものズバリでした。仕事にかける想いと考え方がイブマリと私はよく似ていてまるで長年の友人のように意気投合。1月にイベントがあることを伝えると、ぜひ行きたいとその場で京都行を決めたのです。

イブマリのカリキュラムは、職人養成と経営者育成です。トータル2年間でプロフェショナルな肉屋にしてしまうプログラムです。まず最初の1年間で骨抜きからカットまで一通りの仕事を教えます。残りの1年で経営を教えます。日本だったら技術を習得するのに最低でも3年はかかります。それを1年で習得するのはにわかには考えられないのですが、イブマリのカリキュラムを見せてもらって納得しました。

もちろん2年間でなくても、骨抜きだけとかシャルキュトリーだけとか部分的にもレクチャーを受けることは可能です。ただし、だれでも受けられるかといえばそうではありません。イブマリと私が面接して審査に合格したものだけです。

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愛農高校生がイブマリに質問していたのだが、こういう若者が肉の世界に興味を持ってくれたことがとてもうれしい。南山のスタッフも骨抜きを覚えたいと言っていたし、参加者のシェフからも同様の声が聞かれた。

生産者は牛のことは知っていても肉のことは知らない。肉屋はその逆で料理人は料理は作れても牛のことも肉のことも知らない。しかし、これからは肉屋は牛のことも料理のことも知るべきだと思う。

そういったカルチャーをフランスと日本で作り上げていきたいと思う。

 

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