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格付けとおいしさは関係ないという話

公開日: : 2015/01/09 雑記

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最近焼肉を食べる機会が少なくなった。春から夏にかけてびわ湖でやるBBQがせいぜいで自宅で焼肉をすることなんてほとんどない。あたりまえですが焼肉は焼肉屋さんで食べるのがいちばんおいしいですからね。そんなこと言うならすき焼きだってステーキだってレストランで食べるほうがおいしいに決まってると言われそうですが…

そりゃそうなんですよ、でもすき焼きやしゃぶしゃぶは家庭の味があってステーキだってコツさえ掴めばかなりおいしく焼けるのです。でも焼肉だけは手軽なわりには自宅でやるとおいしくない。おそらく何で焼くのかにもよると思うのですが安物のホットプレートしか持っていない私はこれからも焼肉屋さんのお世話になりそうです。

さて、写真はきたやま南山さんの盛り合わせですが、南山さんといえば赤身肉を積極的に取り入れさまざまなプロジェクトにチャレンジしています。食と農のコミュニケーションを通じた普及に尽力し、若者の育成にも力を注いでいます。

写真の近江牛を見て、どこが赤身やねん?!と思われた方もいるでしょう。どんな牛でも和牛であればロース系やバラ系にはサシが入ります。理屈はどうあれそれが和牛なのです。和牛を食べて脂っぽいと文句言う人がいますが、そういう人は外国産の真赤な肉を食べればいいのです。私の持論ですが、和牛の食べ方はたくさん食べないことです。だって、サシは脂ですから食べ過ぎれば胃が疲れて当然です。

南山さんで食べられる近江牛は木下牧場さんで育った牛たちに限定しています。できる限りサシが入りにくいようなエサを配合してもらっているのですが、人間と同じように牛も食べるもので骨や筋肉、内臓が形成されています。たとえば柔らかい脂を硬くするのもエサの種類や配合で可能なのです。

一般的に評価の高い牛は、小ザシでモモ抜けの良い牛です(通常は赤身になるモモにもサシが入っているよいう意味です)しかしながら、私がお願いしているのはサシはいらないから赤身に仕上げてほしいということです。ただし、赤身でもおいしくなければ商売として成り立ちません。生き物相手なので難しいのですが、まずは病気や事故がないようしっかり管理してもらってそのうえで味を極めていくという感じです。

肉牛の生産者はA5になるように牛を肥育するのですが、まかり間違ってもA2やA3を目指して肥育している生産者はいないと思います。格付け制度が存在する限り、A5を狙った牛作りが基準であり、その基準があるからこそ輸入牛肉との差別化ができ、生産者は目的意識を明確にすることができるのです。

ただ、肉屋や料理人は好みがあるのでA5であれA3であれ目利きのできる人は肉を見て選びます。つまり自分の目(経験値)で見るということです。そういった方は「A5の〇〇牛」なんて数字で価値を表示するやり方はしないと思います。意味ないですからね。

誤解しないでほしいのはA5がよくないと言っているのではなく、A3であれA5であれ信頼のできる生産者が作ったものを背景ごと語れることが販売力だと思っています。屠畜後の枝肉から精肉になるまでの過程でおいしくするのは肉屋であり料理人の仕事ですあり、生産者は少しでも高く売れてね、おいしくなってねと手を合わせて見送るしかないのです。

格付けとおいしさはあまり関係がないということは、このブログをご覧になっている方はご存じだと思いますが、まだまだA5の冠に頼った商売をしている人が多いのが現状です。消費者もよくわからないままに「A5=最高」がメディアによって刷り込まれているので売る側としてのアピール材料の1つではありますが・・・。

格付け絡みで、2~3年前から異変が起きている和牛相場について、今年も高値は落ち着く気配がありません。A5になれなかった牛はA4にランクダウンしますが生産者としてはA4でも上出来なのです。だから昨年なんかA4の発生率がすごく多く、A3やA2の発生率が少なかったように記憶しています。セリ相場なんてめちゃくちゃで赤身ブームも牽引してA3がA4を逆転する場面もありましたからね。

しかし、何度も言うようだが格付けと味は関係ない。おいしくするのは肉屋の仕事であったり料理人の仕事なのだ。もちろん生産者が出荷するタイミングもおいしさのファクターではあります。30ヶ月で出荷する牛もいれば28カ月で出荷する牛もいます。1ヵ月見誤ると皮下脂肪がつきすぎたり、その逆であったりと枝肉になったときの評価に影響するのです。このあたりが生産者の畜眼力なのです。

さて、年末に仕入れた枝肉ですが、少し水分が多かったので枝肉のまま冷蔵庫で風をあてずに吊るしておきました。今日で30日目になりますがいい感じで水分が抜けていて肉の弾力もあり、来週あたりに骨を外せそうです。こんな感じでときには熟成させたりとあらゆる手段を高じておいしく仕上げていくのですが、それでも思い通りになってくれません。だからこそやりがいがありおもしろいのです。

 

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