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肉と会話しないとおいしくなってくれない

公開日: : 2014/12/21 雑記

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肉屋の12月はほんと嫌になるくらい忙しくてギフト需要で毎日追われまくっています。来年あたり、いや、再来年になるかな…1年通して平準化していく予定です。つまり12月やGW、8月のお盆シーズンだけ特別に忙しいのではなくどの月も同じようなペースで営業していきたいということです。

もちろん忙しいのは大歓迎ですし、この1年の取り組みの結果が12月の注文に繋がるわけですから、けっして嫌々仕事しているわけではなく、それどころかテンションMAXで毎日が楽しくて仕方がないと言った感じなのです。

繁忙期は肉の入荷量が半端じゃなくじっくりと肉と会話ができないのです。会話といっても肉に話しかけたりするわけではなく(笑)… 枝肉(骨付きの状態)で10日、20日、30日と経過するごとの変化を追う作業が満足いくようにできないということです。

写真の肉は、仕入れる予定はなかったのですが全農さんからサカエヤさんが懇意にしている農家さん(年に4~5頭しか出荷しない)が久しぶりに出荷したんだけど… と言われれば断る理由もないわけでして。

格付けはB3で肉質も枝肉重量も私の好みのタイプです。ただ、若干水分が多いのが気になりました。こういう肉こそじっくり会話しながら最低でも30日程度は育てていきたいのです。こういう肉こそドライエージングに向いているのです。温度と湿度をコントロールしながら菌や酵素の働きを活性化させ40日くらいかけてじっくりと自由水を抜いていくとかなり旨味のある肉に仕上がるのです。

ただ、個体(枝肉重量)が小さ目だったので、こういう肉の場合はドライエージングよりも、冷蔵庫に枝肉のまま30日程度吊るしておくだけでもかなりおいしくなってくれるのです。もちろん変色は避けられませんので、そのあたりの見極めは重要です。つまりドライエージングしかり長期熟成しかり、耐久性のある枝肉でないと逆効果だということです。

なんでもかんでも熟成させればいいというものではなく、フレッシュで食べたほうが脂の感じも酸味の余韻も優れている場合があります。これらを見極めるには肉と会話するしかないのです。

写真の肉は、あるシェフの元へ届けるために入荷後すぐに骨を抜いて梱包までして、あとは運送会社のドライバー待ちの状態でした。シェフの好みの肉であることは間違いないのですが、あくまでも見た目だけのことで味見をしたわけではありません。こういう肉こそ本来ならばじっくり向き合わなければいけない肉なのです。

バタバタ慌ただしくしているとどうしても会話不足になってしまいます。そうなると肉がおいしくなってくれないのです。夫婦と一緒ですね。どうにも気になってもう半頭のロースから骨を2本ばかり抜いてリブロース側から分厚めに1枚カットしました。届ける予定のシェフの焼き方を真似て焼いてみました。悲しいかなまったく肉の味がしませんでした。ただ柔らかいだけです。

発送は中止です。骨は抜いてしまいましたが10日程度寝かせてからもう一度味見してみたいと思います。私がやっていることはおいしくなったベストな状態で届けることなので、余裕がない状況ではこのように見誤る可能性があるわけです。

忙しくて肉がよく売れるのは商売的にはありがたいことですが、その代償として味がおざなりになるのでは本末転倒というもの。もっとじっくり肉と会話しながら取り組んでいきたいと思います。

 

 

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