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切りたての肉はなぜ暗赤色なのか

公開日: : 2014/12/22 雑記

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切りたての肉は暗赤色をしています。さすがに数年前と違ってご存じの方も多いんじゃないでしょうか。写真は同じ肉ですが左がスライスして30分経過したもの、右がスライスしたばかりのものです。

店頭でお客さんから注文を受けて、不足分を加えてから確認のためにお客さんに見せるとほとんどの方が訝(いぶか)しい顔をされます。なかには古い肉切ったんじゃないでしょうね。てことを真顔でおっしゃる方もおられました。最近はこういったお客さんはいなくなりましたね。 

肉の塊から筋や脂を取り除くと酸素に触れた表面は鮮赤色となります。 しかしながら酸素に触れていない肉の内部は右の写真のように暗赤色なのです。これは内部の酸素が少ない部分におこる還元型肉色素という現象です。暗赤色の肉が空気に触れると左の写真のように酸素型色素が増えて鮮赤色に変化していきます。

特に赤身の肉は重なり合った部分が変色していることが多いはずです。お客さんからも問い合わせを何度かいただいたことがありますが、最近はこういった問い合わせもほとんどなくなりました。以前はひどかったですね。腐ってるだの金返せだのいくら説明しても納得してくれない方が稀におられました。「お肉を1枚ずつ広げてしばらく放置してそれでも色が黒いままでしたら申し訳ないですがもう一度ご連絡いただけますか」といったような対応でほとんどの方がその後なにも言ってこられませんでした。

注文ごとに発送直前にスライスしているので言ってみれば切り置きしている店頭の肉より新鮮なわけです。これが冷凍発送であればあらかじめスライスして在庫しておいた可能性を疑われても仕方がないのですが、当店の場合は基本すべてナマでお送りしていますから腐っているとかはあり得ないのです。

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牛肉の流通はいまや真空パックが主流です。問屋さんから使いやすい部位、いわゆるボックスミートを仕入れる肉屋がほとんどだと思います。当店でも枝肉のバランスをとるためにボックスミートを仕入れることもありますが、基本は私がセリで購入した枝肉がメインです。骨を外す作業が一手間かかりますが、昔からのこのやり方が肉の旨みを損なわない最善の方法だと思っています。

温度と時間を管理しながらおいしくなった頃合いを見計らって骨を抜き精肉にしていきます。牛が育つ環境を把握し、生産者の話しに耳を傾け、頻繁に牧場へも出入りし、生きてるときから見続け、枝肉は自分の手で骨を抜くことにこだわり続けています。おいしさをコントロールするにはすべて自分でやるしかないのです。だからこそ大きな商いはできないのです。体ひとつしかありませんからね。

写真の骨付きモモは、来年の2月まで冷蔵庫で吊るしておきます。ドライエージングによる熟成とは別の冷蔵庫です。温度と湿度を管理した専用庫で40日間寝かせておくのがドライエージングによる熟成肉です。一方、枝肉のまま通常の冷蔵庫で長期間吊るしておくものもあります。ドライエージングする肉と吊るして置く肉を見極めるのが私の仕事でもあるのですが、たとえば赤身が強くて水分量が多い肉はドライエージングに向いているので熟成庫へ移します。一方、サシが強いものは早めに骨を外してフレッシュの状態で精肉にします。この状態で試食して味が乗っていなかったら残りは冷蔵庫で骨付きのまま吊るして様子を見ていきます。

といった感じで牛は個体差によって様々な顔を見せるので常に気にかけながら対処していかなければおいしくなってくれません。私の場合は、肉に軟らかさは求めていなくて、あくまでもおいしさの追求ななので軟らかさだけなら肉は放っておけば時間の経過とともにある程度は軟らかくなってくれます。と畜後、死後硬直した肉を放置しておくと肉は硬直融解(硬直が解けて軟らかくなること)します。この状態を本来なら熟成というのですが、みなさんご存じのようにいまはなんでもかんでも熟成ですからね。いずれにしても肉は筋肉であり熟成によって食べる肉に変換するということです。ちなみに霜降りは筋肉と筋肉の間に脂肪が入り込むことです。

 

 

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