ひさしぶりに後藤さんの経産牛50日DAB仕上がっています
後藤牧場さんところの経産牛(215ヶ月齢)が種が付かなくなって屠畜したのが5月15日のこと。通常、経産牛は痩せてしまって骨が細くなり肉量がとれないので、よくて加工品、悪くて廃牛処分にされます。業界では「ババ牛」と呼ばれて歓迎されない牛なのですが、じつはかなりおいしいのです。見栄えはよくないのですがしっかり理解して料理し、しっかり噛みしめればこれほどおいしい肉はないと思っています。ただ、あまりにも肉が硬い場合や、部位によっては特性を引き出すために短長期でドライエージングします。
元々は優れた血統を持つ但馬系の牛ですから、肉質を見極めてしっかり熟成してやればかなりおいしくなるのです。経産牛の場合、肉牛として販売するには痩せ細った体型を元に戻すために半年ほど再肥育してから出荷する場合があります。このあたりは生産者の考え方や経営的なスタンスが反映されるのですが、後藤さんや木下さんは再肥育しない方針なのでその後は私の判断がおいしさを左右します。
今回は、ロースのみ骨付きで熟成させたのですが50日で仕上げました。最近は肉によって20日程度で仕上げるものや30日で仕上げるものなど、個体差によって熟成期間を変えています。ワインと同じで、肉もコンディションがおいしさの生命線なのです。
価値が低い経産牛でも、流通から屠畜後の保管、さらには枝肉になってからの処理など、細心の注意を払いながらその肉に適切な方法で処置していくことで、かなりおいしくなってくれるのです。その手段のために私がとっている方法がドライエージングなのです。
たまにA4やA5の霜降り肉を熟成してほしという依頼を受けるのですが、手を加えなくてもおいしい肉はわざわざ熟成させる必要性を感じません。経産牛のようになんらかの手を加えることによっておいしくなる可能性がある場合の手段の1つとして私は熟成という方法を選んでいるのです。
今回の後藤さんの経産牛、屠畜後5日と10日、そして熟成期間を経た50日後と3パターンの食べ比べをやりましたが、5日と10日は薄くカットすればおいしかったのですが、分厚くカットした場合、硬すぎて歯が疲れました。熟成期間を経た50日後は見違えるほど肉質は柔らかくなり、旨味も加わって、これなら自信を持っておすすめすることができます。
すでに、サーロインは某所へ嫁ぎましたが、リブ2本とサーロイン1本、骨付きで在庫しています。さらに今週末には木下さんの25ヶ月齢「高城号」のロースも仕上がります。興味のあるシェフの方はぜひご連絡ください。
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