近江プレミアム牛はイルジョットでも食べられます
明日は、ワイナリー和泉屋の新井治彦さんとスペインワインと近江プレミアム牛のコラボイベントが先斗町の佐曽羅 EASTで開催されます。
納涼床で鴨川を眺めながらええ感じで・・・と楽しみにしているのですが、天気予報は雨マークでちょっと心配です。天候だけは祈るしかないのですが、私が祈るのは天候だけではありません。なによりも心配なのが近江プレミアム牛の味です。プロが料理するのでおいしくなるとは思うのですが、なんといっても藤井牧場さんが取り組みに参加して初めての出荷ですからドキドキものです。
枝重220kgと小さすぎるのと、前バラに瑕疵が確認されているのでエサの食い込みが十分でなかったことが伺えます。藤井さんに確認すると案の定、牛がエサにしている酒粕を好んで食べなかったため、いろいろと工夫はしたものの結果として体重が乗らなかったとのことでした。酒粕をきなこにまぶして与えているのですが、木下さん曰く、コツがあるらしくて、このあたりの連携を強化していかないと思い通りの牛に育たないと改めて難しさを感じた次第です。
明日のイベントで木下さんにスピーチをお願いしているのですが、食べてみないと本音でしゃべれないとのことで(笑)……..ひとまず先に、ブリスケ(前バラ)を持ち帰って試食してもらいました。感想は、通常の藤井さんの近江牛よりも格段においしいとのこと。ただ、水分が多いのと国産飼料の良さ(香)がしなかった。という2点を指摘していました。
香りに関しては、エサの食い込ませ方を工夫することで体重を増やして次回以降様子を見るとして、水分が多い点に関しては、屠畜後すぐに試食したため内部保水が抜け切れていなかったものと思われます。おそらく10日程度寝かせると解消するのではないかと推測できます。
すでに、藤井牧場さん初出荷の近江プレミアム牛は、シンタマとウデ以外は完売していまして明日のイベントで味わうのが初となります。食感のまったく異なるサーロイン、ヒレ、ウチヒラの3部位を納めていますので楽しみ倍増といったところです。
ただ、イベントの場合、人数が多ければ多いほどシェフが100%のパフォーマンスを発揮できないので、このあたりはいかんともしがたいのですが、とにかく、たくさんの方に食べていただき忌憚のない感想をお聞きしたところです。
イベントの翌日は、とある勉強会のため東京ですが懇親会はなんとイルジョットを予約してくれているとのこと。となれば、近江プレミアム牛を送るしかないでしょう!ってことでウデを送っちゃいました。そして、残る部位シンタマですが、もちろん、わくわく定期便の会員様に送りますよ。タイミングが合えば、、、ですけどね。
近江プレミアム牛の特徴はなんですか?…..という質問がありましたので簡単にお答えしておきます。
取り組みのきっかけは、私がいろんな牧場を見て歩き、身体的にダメージのある牛を何頭も見てしまったのがそもそものはじまりでした。調べていくうちに、エサが原因だということがわかりました。厳密にいうと、エサの調整が原因です。近年の和牛ビジネスは、牛を大きくしてサシを入れることが主流です。そのために飼料設計が重要になるわけですが、牛の成長と健康に欠かせない栄養素の1つに、ビタミンAがあります。
ビタミンAが不足すると、牛はさまざまなトラブルを引き起こし、健康を害します。たとえば、中枢神経症状、夜盲症や失明したり、妊婦牛では流・早産になりやすく、私がたくさんの牧場で見た中では失明した牛が多かったです。最初は分からなかったのですが、これだけ全国の牧場に出入りしていれば嫌でも分かります。瞳孔が開き目が濁っていてる牛を見る度に悲しくなります。
牛はもともとは草食動物です。牛が草を食べることで、草に含まれるカロテン類(中でもβカロテン)が、体内でビタミンAに変化します。私たちは、「牛も人も健康であれ」をスローガンに、生産者だけではなく料理人も消費者も巻き込んで取り組んでいます。いやいや、私はお肉を買ってはいるけど何もお手伝いしていないし・・・なんておっしゃる方がいますが、食べていただくことが重要なのです。それでけでも参加している意味合いは十分ですし、一緒に取り組んでいる一員なのです。だって、どれだけ素晴らしいう取り組みでも、自信を持って育てた牛でも、買ってくれなければ成り立たないのですから。
ということで、健康な牛にそだてるためには、βカロテンなどを多く含む良質な牧草をたくさん食べさせる必要があるという結論に達したのです。牛が食べているエサで私たちの健康は決まります。ですから、私たちはさまざまな牧草の中でも、βカロテンの含有量が多い自家産の牧草をたくさん食べさせているのです。そうして誕生したのが、近江プレミアム牛です。
日本の畜産はほぼ100%輸入飼料に頼っています。それが悪だとはいいませんが、和牛といいながら中身はアメリカ産では、正真正銘の和牛とは言い難いと思うのです。そんなことをいいだしたら日本の畜産なんて成立しないのは分かっています。ただ、小さな肉屋を信頼してくれて買い物してくださるお客さんが全国にたくさんおられます。
たくさんと言っても、もともとの規模が小さいですから知れてはいるのですが、だからこそ国産飼料100%の近江プレミアム牛が育てられるのです。これが大きな企業であれば、月に1頭の出荷では採算がとれません。それとアメリカやオーストラリアに比べてコストが高くつくのでビジネスモデルにはならないのです。
食料は軍事的武器と同じ「武器」であり、直接食べる食料だけではなく、畜産物のエサが重要である。まず、日本に対して、日本で畜産が行われているように見えても、エサをすべてアメリカから供給すれば、完全にコントロールできる。これを世界に広げていくのがアメリカの食料戦略だ。
これは東大の鈴木教授の著書からの引用ですが、あながち間違っているとは思えません。日本の畜産をどうにかしようなんて私はこれっぽっちも思っていませんが(まぁ、できないが)、しかし、理解と共感してくれる方たち一緒に微風くらいなら起こせるのではないかと思っているのです。
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