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健康な牛の肉はサシ入りでもおいしいのです

公開日: : 2013/08/31 メディア

撮影:中塚麿美

撮影:中塚麿美

10月の講演に向けて原稿をまとめていたのだが、資料を整理してみると2001年のBSE問題は商売の在り方としても分岐点になっていることが改めてわかる。ここ数年に就農した若者やUターンして家業の牛飼いを継いでいる2代目はすでにBSEを知らない世代なのだ。このあたりは経験者がしっかり伝えていくべき問題だと思うのだが、どうやらうまくいっていないようだ。

近江牛はなにか問題が起きても大丈夫と高を括っている若者もいるようだが、消費者の牛肉離れは経験した者でないとわからないだろう。いくら流行っている店でもだれも買わなくなれば潰れてしまうのだから。

ここ10年の畜産業界は私たちがあがいてもどうすることもできない災いばかりで、その対策として、せめて自分たちが確認できるものを牛のエサとして食べさせよう、人間と同じように牛の「健康」を重視した飼育をしていこうと木下牧場さんと藤井牧場さんに協力してもらって取り組んでいるのだ。その一環として、国産飼料100%で育てた牛の出荷がいよいよ来月に迫っている。

国産飼料は集めるのが困難で、集まったとしてもコストが輸入品に比べて2~3倍するのだ。しかも粗飼料を多く与えて育てているのでサシも入りにくい。ということは市場では評価されにくい牛に仕上がるわけだ。

赤身が多くて値段が高い牛は売れない。しかし、それは一昔前の話しであって、感度の高い料理人たちが私たちの取り組みを支えようとしてくれている。料理人だけではない、近江牛.comのお客様も同様に支持してくださっている方が多くいらっしゃる。月1頭の出荷なのでプレミアムな販売となりそうだが、半頭はきたやま南山で、もう半頭は当店の取引先のレストランとわくわく定期便の会員のみなさんにと考えています。

日本の畜産は輸入飼料なくては成立しないのだが、私個人としては思うところはあるが畜産農家の経営選択を否定するつもりは毛頭ない。牛はペットではなく経済動物であり、しかも利益を出さなければ倒産してしまう。肉牛というぐらいだから肉にしてこそ経営が成り立つのだ。

ただ、狭い牛舎に牛を詰め込んで輸入のエサでビタミンを制御しながらサシを入れる肥育が私にはどうしても受け入れられない。牛に無理をさせると必ず人にツケがまわってくるような気がしてならないのだ。約30か月の短い命、健康に育ってほしいと木下さんや藤井さんは牛舎に放牧スペースを設けている。自分たちが育てた牛が精肉になると必ず店舗まで買い物にくる。そんな生産者はあまりいない。つまりは最後まで責任をもって見届けているのだ。

料理人の方や私の友人たちを木下牧場へお連れすると、1時間のはずが気がつけば3時間、4時間なんてことはしょっちゅうで、気軽に立ち寄るとついつい長居してしまうので、最近は気合を入れないとなかなか寄ることができない。私が思うには人にも牛にも居心地のよい環境であり、それこそが「おいしいさ」の源になっているのではないかと思うのです。

食に安さだけを追求している方には理解できない話しかと思うのですが、いや、理解はできても目の前の赤札に手が伸びてしまうのかも知れない。ただ、安全なものには正当な対価を払うのが当たり前だという認識が共有できる人、そこに価値観を持ってくれる人が増えてくれることを願っている。

さて、木下牧場へは当店のお客様なら1度はお連れしたいのですが、現実的にはむつかしいですよね。滋賀に来られる用事でもあれば別ですが、なかなか滋賀に用事がある人はない。てことで、9月7日(土曜日)日テレの満点☆青空レストランで木下牧場がご覧いただけます。

牧場の様子、木下さんの話し、もちろん飼料についてのこだわり、私がもっとも力を入れている経産牛のお話し、そして後半は私も加わって熟成肉のお話し、さらにサルティンボッカの木村シェフも登場します。

お時間のある方はぜひご覧くださーい。

 

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