格付けは枝肉を評価する「ものさし」なのです

次回の鹿児島産経産牛のドライエージングビーフは4月23日に仕上がる予定です。連休前なので少し多めに販売できそうです。
今日は、近江八幡市の生産者が飼養した牛ばかりを集めた枝肉共進会でした。
雌26頭、去勢16頭の計42頭が出そろい、生産者も賞狙いの牛を出してくるのでA5の発生率も高く、賑わいのあるセリだった。
枝重は平均で500kg、なかには雌で661kgというものまで。シコリやズルの瑕疵ありで自然に大きく育ったわけではないことがうかがえる。増体もいいけど枝重制限してもっと近江牛の規定を厳しくするべきだと思う。そうすることがブランドも牛の健康も守ることになるのだが。キレイごとじゃなく真剣にそう思う。いろんなシガラミもありそう簡単にはいかないだろうが。
最初に断っておきますがけっして批判しているわけではなく、生産者の日頃の苦労や努力はこうした共進会で賞をとることで評価され、認められ、格付けが良ければ10円でも高く売れる可能性があり、しいては牛を飼うことの意欲にもつながると思うのです。農家(生産者)は経営安定を優先させなければいけないし、人も牛もごはんを食べていかなければいけません。そのためには儲かる牛を作らないといけない。このあたりは長年畜産業界で育ってきた人間としては十分理解している。
A5などの格付けに関しては、テレビや雑誌であれだけ書きたてれば、いまやだれもが知っているのではないでしょうか。実際、私の講演で質問すると過半数以上が知っていると答えてくれる。もし知らなくてもパソコン持参の方はその場で検索すればすぐわかること。
1つだけ言っておきますと、「A5だから・・・」というキャッチにおいしさを絡ませたようなこだわりっぽい文章はあてになりません。だって、格付けは枝肉を評価する「ものさし」であって「おいしさ」はあまり関係ないのです。セリの前に枝肉を少しずつ切り取って味見もしませんしね。
一部では、おいしさを決める要素を科学的に分析し、オレイン酸やグルタミン酸の数値を示す取り組みも行われています。サシ以外の評価基準としては喜ばしいことではあるが、これとてあくまでも「ものさし」でありアテにはならない。
今日のセリでは我らが木下牧場の女の子2頭の成績はA5でBMS(霜降り度合)8でした。自家産の粗飼料をたっぷり与えて、放牧させて健康に育てている木下さんの牛でさえA5の肉は私にとっては魅力がありません。もちろん意図的にビタミンコントロールして作った牛ではないにせよ、サシが入りすぎて食べやすいなんてありえないのです。みなさん、よーく考えてください。サシは脂ですよ、とろけるのではなく溶けるのです。そして食べ過ぎるとクドくて当たり前なのです。
売り手側の「A5アピール」は良く言えば付加価値であり、販売戦略です。インターネット的にいえば小手先のテクニックであり本質ではないのです。
東京の焼肉店から木下牧場指定で注文が入っていたため1頭は買い付けたが、もう1頭は見送りました。生産者の方々には申し訳ないが、私はいつも生産者の側にいて懸命に応援は続けていくが優秀賞や知事賞が付いた枝肉にはまったく興味がありません。優秀賞を落札してほしいという要望もたまにありますがお断りしています。1頭買いなら割り切れるのですが、必要な部位(たとえばロース、ヒレだけとか)だけ買い取られて、残りは当店で販売しなければいけません。たとえ安価で落札できたとしても私が自信を持っておすすめできないものを販売するわけには行かないのです。
私はネットでマスマーケティングをやりたいわけではない。おそらくこんなやり方していたらできないだろうけどね。でも、私が手がけた肉をおいしいと言ってくれる方が1人でも増えてくれたらそれはそれで新しい価値観が生まれると思うのです。
今日、私がイチオシの枝肉は藤井牧場さんのA4-BMS5でした。
もちろん、落札しました。来週あたりから販売しますのでお楽しみに。
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