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「肉を焼く」って何?(奥深き肉焼き)

僕が2歳のときに出版された「牛肉の本」(←タイトル)にこんなことが書かれています。「肉の価値は調理と食べ方できめられます」と。ほんとそうですよね。昭和38年に出版された本ですが内容はいまの時代でも十分参考になるものばかり。ということは基本的なことはいまも昔も同じということですね。情報も食も基本があって調味料振りかけて色づけしているだけで、変な情報を食べないようにしないといけませんね。

昔の本には「火入れ」という言葉はでてきませんが、肉を知れば知るほど火入れに悩まされます。火入れがすべてだというシェフもいますからね。肉を焼くだけなら誰だって焼けますし、レシピ本や動画をみて忠実に再現できれば僕だってそこそこおいしい料理は作れてしまいます。肉を焼くという一見簡単そうな行為は、じつは奥深くてひとたび足を踏み入れたならずるずるとハマってしまうのです。道具もいろいろで、フライパンで焼くのか、鉄板なのか、ココットを使うのか、はたまた炭火なのか薪なのか、あるいはスチコンなのかウォーターバスなのか、圧力鍋で煮るのか・・・

僕が「手当て」と呼んでいるのは、ざっくり言ってしまえば水分調整と熟成、そして保存です。ただし世間でなにかと話題の熟成とは少しニュアンスが違います。文字にすると伝わりにくい部分もありますが、例えば近江牛のようにサシが入りやすい和牛と真逆の育て方をしている放牧系とでは熟成のやり方を変えます。どちらにしても冷蔵庫(熟成庫)に入れっぱなしではなく、個体差を見極め日々対応していくことがおいしい肉を育だてることにつながるのです。

少し前になりますが、あるシェフが当店を訪ねてくれました。数回取り引きがある程度ですが、そのシェフを紹介してくれた人、そのシェフが尊敬する人、そのシェフの師匠、いろんなご縁が重なってシェフのお店で食事会という名の勉強会を開催することになりました。参加者は料理人や食関係者です。

その日に合わせて僕が仕上げた肉は3種。ジビーフとブラウンスイス牛とバザス牛です。3種とも放牧系ですが、「肉を焼く」というテーマにはピッタリの難しい肉なのです。仕上げ方はそれぞれ異なったやり方をしましたが、部位(サーロイン)と厚み(7㎝)を統一して焼き比べ、食べ比べをしました。

・産地:フランス
・バザス牛(10日間吊るした後、熟成庫で30日)
・生産者:フランソワ パラヴィディーノ(正確には遺伝子の専門学者で、南西部の成牛、仔牛、羊などの飼育者をまとめているバザスの屠畜場の所長です)

・産地:岡山
・ブラウンスイス牛(熟成庫で25日)
・生産者:吉田牧場(吉田全作)

・産地:北海道
・ジビーフ/アンガス種(乾燥庫20日)
・生産者:駒谷牧場(西川奈緒子)

バザス牛

ブラウンスイス牛

ジビーフ

結果として、水分調整により思っていたより焼き時間が早く、各々の特徴を出すにはやはり「手当て」というひと手間が必要だと改めて実感しました。肉を食べているというより情報を食べている昨今のブームですが、こうした勉強会で僕自身が学ぶことも多くあります。

〆のあいさつでシェフの言葉にジーンときたのは僕だけではなかったはず・・

「ジビーフを触って震えました、ブラウンスイス牛に包丁を入れたとき涙がでそうになったのをこらえました。緊張でテンパリましたが楽しかったです」

肉を焼くということは簡単ですが奥が深く、もしかしたら答えなんて永遠に見つからないのかも知れません。

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