A4やA5の肉より赤身が強いA2やA3の肉の方が扱いが難しい
牛肉相場の高騰で、どのお店もかなり頭を抱えていると思いますが、相場が上がったからといってすぐに価格を変更するわけにもいかず、耐えて耐えてこのままだったら潰れるんじゃないかという危機感たっぷりな状況になって、ようやく決断できるのが価格変更だと思うのです。しかし、現状はどうかと言うと、価格に消費者がついてこれていないというのが現場の声ではないでしょうか。
「赤身肉のステーキが欲しいのですが、値段はグラム600円ぐらいで・・・」
店頭のお客様からのご注文ですが、近江牛でグラム600円はなかなか厳しいです。すき焼きや焼肉をカットした端材でならご用意できるのですが、ステーキとなると厚みがとれないし、無理して売ろうものならクレームになりかねません。お客様の満足度は肉の柔らかさが断トツで次いで香りや旨味だと思うのです。「柔らかくておいしい」はよく聞くフレーズですが、「固いけどおいしい」はあまり聞きませんね。「固いけど味がある」ならたまに聞くかな。
ヒレやランプなど柔らかい赤身部位は当然ながら高い。シンタマやウチヒラでスライス商品を作った残りで焼肉にカットする場合は、肉屋のほとんどはJACCARD (ジャカード)を入れて繊維を切ります。
私もJACCARDを使うこともありますが、できれば「固い肉は固いなりに楽しんでください」という考え方なので、なるべく素材そのままで販売しています。しかし、「近江牛=柔らかい」と思われている方が大半なので時々お叱りを受けることもあったりします。近江牛なのに固いと・・・。
もちろん歯が折れるほど固い肉はお売りしていませんが、実は赤身肉の販売って結構難しいのです。特にサシの少ない(赤身が強い)A2やA3の肉を1頭仕入れしている場合の商品化は知識や技術だけでは補えないものがあります。
赤身肉に比べると、サシがよく入っている肉は扱いやすくて、よほどくどさが強くない限り、お客様の満足度も高いと思われます。そういう意味では、まだまだ赤身肉はブームといえども高いお金をもらえるほどの値打ちがないのが世間一般なのかも知れません。
先日伺った熊本の生産者たちは、阿蘇のあか牛に代表されるようにこぞって赤身になる牛を飼育されていました。環境も牛を飼うには適していますし、なによりもストーリーに心がぐっと掴まれます。背景もキレイですしさぞ売れるのだろうと思いきや、みなさん苦労されているのです。
つまり、環境や物語と売ることはまったくの別物なのです。一回は試し買いしても2度3度とリピートしてもらうには、その肉がおいしくなくてはいけません。そのためには手当て(扱い方)が重要なのです。だから赤身肉は難しいのです。枝肉枯らしやドライエイジドも赤身肉をおいしくする手当てのひとつですが、いやはや牛肉は奥が深いです。
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