*

A4やA5の肉より赤身が強いA2やA3の肉の方が扱いが難しい

公開日: : 2016/03/19 雑記

P1030665

牛肉相場の高騰で、どのお店もかなり頭を抱えていると思いますが、相場が上がったからといってすぐに価格を変更するわけにもいかず、耐えて耐えてこのままだったら潰れるんじゃないかという危機感たっぷりな状況になって、ようやく決断できるのが価格変更だと思うのです。しかし、現状はどうかと言うと、価格に消費者がついてこれていないというのが現場の声ではないでしょうか。

「赤身肉のステーキが欲しいのですが、値段はグラム600円ぐらいで・・・」

店頭のお客様からのご注文ですが、近江牛でグラム600円はなかなか厳しいです。すき焼きや焼肉をカットした端材でならご用意できるのですが、ステーキとなると厚みがとれないし、無理して売ろうものならクレームになりかねません。お客様の満足度は肉の柔らかさが断トツで次いで香りや旨味だと思うのです。「柔らかくておいしい」はよく聞くフレーズですが、「固いけどおいしい」はあまり聞きませんね。「固いけど味がある」ならたまに聞くかな。

ヒレやランプなど柔らかい赤身部位は当然ながら高い。シンタマやウチヒラでスライス商品を作った残りで焼肉にカットする場合は、肉屋のほとんどはJACCARD (ジャカード)を入れて繊維を切ります。

私もJACCARDを使うこともありますが、できれば「固い肉は固いなりに楽しんでください」という考え方なので、なるべく素材そのままで販売しています。しかし、「近江牛=柔らかい」と思われている方が大半なので時々お叱りを受けることもあったりします。近江牛なのに固いと・・・。

もちろん歯が折れるほど固い肉はお売りしていませんが、実は赤身肉の販売って結構難しいのです。特にサシの少ない(赤身が強い)A2やA3の肉を1頭仕入れしている場合の商品化は知識や技術だけでは補えないものがあります。

赤身肉に比べると、サシがよく入っている肉は扱いやすくて、よほどくどさが強くない限り、お客様の満足度も高いと思われます。そういう意味では、まだまだ赤身肉はブームといえども高いお金をもらえるほどの値打ちがないのが世間一般なのかも知れません。

先日伺った熊本の生産者たちは、阿蘇のあか牛に代表されるようにこぞって赤身になる牛を飼育されていました。環境も牛を飼うには適していますし、なによりもストーリーに心がぐっと掴まれます。背景もキレイですしさぞ売れるのだろうと思いきや、みなさん苦労されているのです。

つまり、環境や物語と売ることはまったくの別物なのです。一回は試し買いしても2度3度とリピートしてもらうには、その肉がおいしくなくてはいけません。そのためには手当て(扱い方)が重要なのです。だから赤身肉は難しいのです。枝肉枯らしやドライエイジドも赤身肉をおいしくする手当てのひとつですが、いやはや牛肉は奥が深いです。

 

記事が気に入ったらシェアをしてね

  • twitter
  • facebook
  • google+
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

霜降り信仰揺らぎ、健康志向で赤身人気

日経新聞の記事ですが、タイトルは「牛肉、霜降り信仰揺らぐ」というものだ。内容を簡略すると、格

記事を読む

意外と忘れられるサーロインの筋は丁寧に取り除きましょう

現在販売中の木下牧場さんの近江牛A4サーロイン、けっこうサシが入っているのですが食感は意外と

記事を読む

マッキーさんの60歳の成人式を祝う会~Le14eでパトリック・ブージュと出会う

昨日は、マッキー牧本さんの還暦パーティー(正式名は60歳の成人式を祝う会)に出席するために東

記事を読む

消費者の欲求は変化していくもの

愛農ナチュラルポークのイベントが3月4日(徳島)、3月20日(東京)開催されることになった。

記事を読む

素材をいかにおいしくするかは技術と知識と感謝だと思うのです

熟成庫で60日を超えた経産牛のリブロースです。経産牛は骨が癒着していて関節に包丁が入りにくか

記事を読む

和牛・牛肉通販 近江牛.com

https://www.omi-gyu.com
仕事の奥深さ

本日から11月、しかし一年あっという間でなんか怖いですね。同級生ですで

所作

写真は、昨夜、BRUSTAで食べた近江牛ウチヒラ。西山さんはワ

今月のジビーフも2頭入荷しています

↑ はるか 今月も2頭のジビーフが入荷してきました。「はる

→もっと見る

  • 2024年4月
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930