ブランドを背負った経産牛はしっかり説明しないとクレームにつながったというお話

セリ場である問屋さんと話していたときのこと。「近江牛のイメージは細かいサシが入っていて柔らかい肉」だと思われている。特に関東のお客さんに多いかな。だから相場が高くても頑張って良い牛を買ってるんや。と・・・
確かに一理あると思います。そんなイメージを持たれている方ばかりではないにしろ、「良い肉=柔らかい肉」が和牛であり、ブランドを背負っている肉に課せられた定義のように思われている部分もあります。
最近の話ですが、切り落としをご購入されたお客様からクレームがありました。肉の色が濃く固いと。肉をカットしているのは私ですからピンときました。経産牛で商品作りしたときのものに違いありません。リピーターのお客様ですから、いつもの切り落としとは色も形も食感も違いすぎて電話してこられたのでしょう。明らかに私の説明不足であり怠慢です。
最初(ご購入時)に経産牛についての説明をしてご納得いただいてから購入いただけていたのなら、おそらくクレームはなかったでしょう。
いつもご購入いただいている切り落としは、近江牛のロースやウデの端材を使っていて、適度にサシが入った部分もあるので柔らかくてすき焼きにしてもおいしです。しかし、今回の切り落としは、経産牛で子供を数回産んでいるお母さん牛なので肉質は固めです。脂も少し黄色いですし肉色も濃いですが、噛みしめていくと旨味があり、私は気に入っています。いつものものとは違いますが、一度お試しいただけませんか。・・・みたいな説明をしていればクレームではなく、好みの問題でご納得いただき次回からは選ばれないか、もしかしたら、気に入ってファンになっていただけたかも知れません。
なんの説明もなければ「近江牛=柔らかい肉」であり、価格が高ければなおさらです。赤身で歯ごたえがあった方が好みだとおっしゃられるお客様もおられます。また、同じ経産牛を買われたお客様から、おいしかったので同じものを買いたいとお電話いただいた事実もあります。ただ、このお客様は、私の知人で日頃からFBの投稿などで肉事情というか特性を知ったうえでご購入されているので、言って見れば納得済みでの買い物ということになります。
柔らかくても固くても、私が試食しておいしいと思えば販売する上での判断基準のひとつとなりますし、判断基準をどこにもっていくかで売るか売らないかを決めていくのですが、安ければなぜ安いのか、高ければなぜ高いのか、しっかりした説明をしてご納得いただいたうえで買い物していただくことが常であるように、固ければ固いなりの理由もしっかり説明して、買い物時のサポートができるように心がけたいと思います。
普段は滅多に販売しない経産牛だからこそ、見慣れない肉にお客様は戸惑われたんだと思いますし、経産牛に付加価値がつけられるかどうかは別として、ストーリー性を背景にした売り方もあったのではないかと反省しております。
市場では廃用牛とかババ牛と呼ばれている経産牛ですが、ちゃんと向き合ってやればこれほどおいしい肉はありません。また仕入れられる機会がありましたら、今度はしっかり説明付きで販売させていただきたいと思います。
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