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釣り方と手当て(扱い)

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健康志向の高まりとともに赤身肉が人気となり、熟成肉のブームも拍車をかけ「脱・霜降り」といった声も聞かれますが、実際はどうなんでしょう。確かに消費者の動向はやや赤身に偏っている傾向は感じますが、和牛の現場からみれば数年前よりも赤身が売れるようになっただけで、市場の動きはまだまだ霜降りの根強さを感じます。セリで恐ろしい値段で落札されていく枝肉(サシがよく入ったA5とか)を見ているとそんな風に感じてしまうのです。

和牛の場合は、赤身といってもそれこそピンキリで等級によってはモモにもサシが入ります。写真はジビーフのウチヒラですが、鹿肉と見間違うほどの赤身です。ジビーフはアンガス種で完全放牧のためどこを切っても赤身しかでてこなくて、肉質も硬めですし和牛のように味に深さもありません。だからすき焼きやしゃぶしゃぶには不向きなのです。

いま和牛は輸出が盛んに行われています。数年前までは一部の方々だけの独占だったのですが、これからは海外販路開拓への窓口がオープンになり、数年後にはだれでも気軽に輸出ができる仕組みができるようになるでしょう。実際そういった動きがありますし、政府は「2020年の輸出額250億円」を目標に掲げているので、興味がある方はビジネスチャンスが広がるかも知れません。ただ、安価な外国産WAGYUが世界を席巻しているので、現状だけをみれば本来とるべきシェアを奪われた感じは否めないでしょうね。

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ところで、私が魚を食べていると驚かれることがあるのですが、じつはお鮨が大好きでして、なによりもカウンター越しでみる鮨屋の仕事が好きなのです。日本の魚が世界一といわれているのは、漁師の釣り方と手当て(扱い)がいいからであって、目の前でその職人技が見られるわけですからたまらなく興奮するのです。

和牛の場合は、生産者が牛の個性をどれだけ引き出せるか、つまり肥育段階で決まってしまいます。血統やエサが牛の味となり格付評価が生産者の通信簿になるのですが、私はあまりそこに拘りはありません。それよりも、枝肉になってからどの時点をピークと捉えて精肉にしていくかを重要視しています。つまり手当て(扱い)こそ私の役割であり責任部分だと思っています。

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ジビーフのロースですが、先にも書いたように肉質は硬く和牛のように味に深さがありません。これだとウェットエージングの輸入アンガスとなんら変わらないのです。

北海道の様似新富は人口2人(西川さん親子だけ)、携帯電話も繋がらないところで200haの放牧地を駆け回る44頭のジビーフたち。真夏も真冬も牛舎ではなく完全放牧でエサは自生の草だけ。このようにジビーフのストーリーはだれもが引き込まれる物語です。

しかし、いくらストーリー性があってもおいしくなければ2回目はありません。だからこそ手当てが重要なんです。草だけで育つジビーフは水分が多く、乾かしたり冷蔵庫を変えたりしながら水分を飛ばしていきます。おいしくなってもらうには時間と手間がどうしてもかかってしまいます。その手間さえ惜しまなければジビーフは必ず応えてくれます。30日以上かけて仕上げていくのですが、赤身が詰まった肉質はほどよく繊維がほどけて奥行きのある旨味がやさしい味わいとなって生まれ変わります。

育て方と手当てによって肉の味はまったく違うものになります。いま私のところには研修生が1人おります。シルバーウィーク中も料理人が1名研修にきます。私は指導者向きではないので、そういった間口を広げているわけではないのですが、一人でも多くの若者が厳しい肉の世界で夢がみられる環境を作れるのであれば、ジビーフのように可能性が広がるお手伝いをしたいと思っています。

 

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