肉Meets × モルドヴァン・ヴィクトル in ファームレストラン・ヴィーズ
公開日:
:
2014/06/20
イベント, ジビーフ(完全放牧野生牛) 完全放牧野生牛ジビーフ
ジビーフ(完全放牧野生牛)を使っていただいているシェフのみなさんにどうしてもホンモノを見てほしいということで実現した「道東生産者をシェフと食を愛する人々でまわるツアー」が無事終了しました。牧草だけ食べて育つジビーフの肉はかなり手強くて、なかなか思い通りにはいかないのです。サシが多い肉は目をつぶっていてもカットできますが、ジビーフは水分量が多いうえに肉質が硬いので扱いにくいのです。さらに締りがないので肉がブヨブヨと落ち着かない。でも、ちゃんと肉を理解して料理してやればこれほど美味しい肉はないのです。
で、聞いてみたんです。北海道へ行きませんか?って…. え、てなりますよね。当然です。最初にだれに声をかけたかな… たぶんクレメンティアの田淵シェフだったと思うのですが、二つ返事で行きます!でした。そして、サルティンボッカの木村シェフ、愛と胃袋の信作シェフ、イルジョットの高橋シェフ、みなさん二つ返事なんです。2泊3日、お店は臨時休業です。
私としては、とにかく現地を見て感じてほしい、そうすることによって感性豊かなシェフたちですから何か感じとってくれるに違いないと思ったのです。そうしないとジビーフはおいしくなってくれないような気がしたのです。
たくさんの方の協力があり、北海道(道東)の生産者のみなさんとの交流あり、道中の運転手をかってでてくれた仲間あり、これからの食と同じく「連鎖」という言葉がピッタリくるすばらしいツアーでした。
まずは初日、十勝ヒルズのファームレストラン・ヴィーズにおいて肉Meetsを開催することになったのですが、料理を担当してくれたのがハンガリー人のモルドヴァン・ヴィクトルさんでした。通常、シェフとは何度も打ち合わせてから本番に挑むのですが、今回は通訳さんへの伝言のみでモルドヴァン・ヴィクトルさんとは話すことも対面することもなく、まさしくぶっつけ本番状態でした。
会場にはジビーフの生産者でもある西川奈緒子さんをはじめ、地元の生産者も含めて30人以上が集まってくれました。
さて、肝心の料理ですが、私が事前に送っておいた部位は、ジビーフのウデとカタロースでした。料理名は失念しましたが、まずはウデ肉を使った料理から。
私は、味の評価については、「おいしい」or「まずい」の2通りしかないと思っています。まぁまぁ、とか、こんなもんかな、というのは評価でもなければ感想でもありません。そういった観点からいくと、ヴィクトルシェフが作った料理はおいしいものでした。しかし、残念ながらジビーフの良さを理解されていない、つまり良さを消してしまった「ふつうにおいしい」料理だったのです。
まんまるに整形された肉にかなり悩まれたであろう跡が見えますが、口に入れた瞬間、ミンチを噛んでいるかのような柔らかさに驚きました。ジビーフの良さは「硬さ」なのです。ガシガシと噛みしめながら様似の牧草地を走る牛たちをイメージすることで、おいしさが膨らむのです。
シェフは、ジビーフの肉を目の前にしてなかり悩まれたと聞きました。硬い肉は柔らかくして提供することがセオリーです。ですからシェフはセオリーどおりに柔らかくすることに最善を尽くしたのだと思うのです。そして得意のソースを合わせておいしく仕上げた。間違いではないのですが、もし、シェフが様似に出向き生きているジビーフを見たのであれば、おそらくもっと違う料理になっていたかも知れません。
牛肉はサシが命でとろけてなんぼ。そんな時代が長く続きました。しかし、赤身肉をガッツリ食べたい志向が高まり、塊肉を焼く店も増えてきました。海外の牧草牛も注目を集めていますが、私的には、ホテルの宴会料理の延長でしかありません。たしかにあっさりとした触感で食べやすいのですが、だれが焼いても同じような味になんの魅力も感じません。そこでしか食べられない肉にはなりえないのです。だからこそ、シェフのみなさんにジビーフの里を見てほしかったのです。できれば今回の肉Meetsで料理を担当してくれたヴィクトルシェフにも。
メインのカタロースですが、グラスの香りがしておいしかったです。火入れも抜群でヴィクトルシェフのクオリティの高さが伺えます。欲を言えばもう少し厚くカットしてほしかった。そうするとジビーフの良さがもっと伝わるのに…
料理人を育てるのは食べ手です。「おいしかった」の一言できれいに終わらせることもできるのですが、私は体裁を取り繕うようなきれいごとは言いたくありません。生産者が命がけで育てた牛をおいしく食べたいし、おいしく料理してほしい、牛に触れ、自然に触れればそう思って当然至極です。だからこそ、今回のツアーは大いに意義があったのです。
一度に書ききれませんので、何度かに分けてレポートしたいと思います。
ジビーフが作った道を上り下りする人間たち。とにかく汗だくで筋肉が悲鳴を上げている。ジビーフたちは平気な顔して走ったりジャンプして降りるのですから、肉が硬くて当然、。そういうことを理解して料理して、そして食べ手に語ればおいしくないわけがない。
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