消費のクリエイティビティが育つと食の世界が変わる
公開日:
:
2013/02/10
雑記

きたやま南山主催の「糖質オフグルメ」で大好評だった塩麹でマリネした近江牛ステーキ
若手社会人には、「課題設定力」や「創造力」、「伝達力」、「視覚化力」などの不足が目立ち、「ビジネス・クリエイティビティ」が求められている。(nikkeiBPnetから)
40歳代の管理職から見た若手社会人(部下)に対する評価だそうだ。要約すると、日々の仕事にクリエイティビティ(創造性)が必要ということだが、別に若手社会人に限らず、評価した40歳代の管理職も含め年齢には関係なく言えることではないだろうか。
インターネットのおかげで世の中便利になり、見方を変えれば振り回され、犯罪も増えたりと、やっぱり便利なものは使い方次第で善にも悪にもなるのだと、悲しいニュースをテレビ画面から見るたびに思う。
ところで、血統の良い、つまりサシの入りやすい血統を継いだ牛は、肉質等級で高評価になる確率が高く、そのために肥育農家は高い子牛を導入するわけだが、もちろん思い通りにいかないのが生き物であり、牛飼い(生産者)は博打的な要素もあるのだ。
生産者は、肉質等級の良い牛ができれば満足し、購買者(問屋、肉屋含む)も満足する(喜ぶ)と思っているだろうし、逆に購買者は良い牛さえ手に入れば(仕入価格はさておき)消費者は満足すると思っている。
ネットもテレビもあいかわらず、「○○牛のA5ランクをいただきまーす!う~ん、柔らか~い!!」なんてことをやっている。言い換えれば、そこしかこだわれるところがないわけで、アイドルなんかのグルメレポは見ていても辛いものがある。肉は分厚いが内容が薄い。
いままではそれでよかったのかも知れないが、使い方(消費)が需要かつ大事になってくるこれからの時代は少し違ってくると感じている。
最初に断っておくが、私はサシのある肉を否定しているわけではない。むしろ、今後再開されるであろう米国産牛肉との区別のためにはがんばらなければと思っている。ただ、個人的には好きではないということ。そして、和牛もサシと赤身の2極化が進んでいるということを肌で感じている。
世界から霜降り信仰と呼ばれていたいままでの時代は、サシの入った派手な肉を食べることが贅沢でありステータスであり、「ハレ」であった。
ところが、若者がフランスやスペイン、イタリアなど海外で料理の修行をしてから帰国後、探す肉は霜降りの肉ではなく赤身肉なのだ。修行先では、経産牛のような硬い肉と毎日格闘しているわけで、それらの肉の扱いに慣れているから、サシの多い肉は使いたがらない。
しかし、彼らが思い描くような肉は日本にはない。そして仕方なく輸入牛肉やホルスタイン、交雑種に落ち着いてしまうのだ。
しかし、昨今、短角牛やあか牛などサシが入りにくい牛肉が出回りはじめたこともあり、料理人が様々な肉を選べるようになってきた。サシを求めない木下牧場の近江牛もその1つで、近江長寿牛なんて赤身好きのシェフたちは大喜びしている。その延長線上にあるのが、ドライエージングビーフ(熟成肉)なのだ。
どこのだれが育てたのか、つまり頭で楽しむ時代から「こころの感覚」の時代へと変化していくといったいなにがおこるのか?
このことは、先日のNHK「うまいッ!」の放送後に感じることがあったので、次回にでも書きます。
12月の繁忙期が過ぎ、暇な2月はA5の肉なんて売れない。問屋さんの冷蔵庫にはロース系の在庫が山のようにある。反対にモモなどの赤身系は入荷待ちの状態だ。入荷してもモモから先に売れていくのでロース系はますます在庫となり、賞味期限直前に処分されるのだ。
いくら見栄えが良くて評価が高くても、使われて(消費されて)こそだ。
これからの時代はつくり方(育て方)も大事だが、使い方(消費)はもっと大事になってくると思う。そして、消費のクリエイティビティが育つと食の世界も潤う。
【予告】愛農ナチュラルポークで作ったサルシッチャ(イタリアの生ソーセージ )を販売します。たくさん作れないので予約販売となりますが、めちゃくちゃおいしくてどうしましょうって感じです。販売まではもう少しお待ちください。
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