生涯現役、肉屋しか知らない父親の勇断
公開日:
:
2017/04/02
コラム

うちの父は80歳だが先月まで母と2人で駅前商店街の一角で肉屋をやっていた。数年前からマンションや商業店舗を含む高層ビルを2019年に建てる計画がされていて、今年の2月をもって全店舗が立ち退いたのだ。自らの意志に関係なく閉店するしかなかったので思うところもあったかと・・・。ただ、年齢的なこともあり、これを機に引退してゆっくりしてもいいのかなと思っていた。
しかし、お客様が許してくれなかった。署名運動がはじまり、やめないでほしいと手紙を書いてくる人がいたり、場所を提供してくれる人がいたり、花束を持ってくる人がいたり、いままでおいしいお肉ありがとうとお金を包んでくる人がいたり、涙するお客さんが後を絶たないのだ。愛想もくそもない父親としゃべりだしたらとまらない母親だが、こんなにも愛されていたのかと驚いた。私も商売人のはしくれなので鳥肌が立った。
周囲の方々も、年も年だし引退してもいいのではと言う意見もあったが、15歳で熊本からでてきて肉屋一筋の父親から仕事をとってしまえばボケるかも知れない不安もある。両親2人でいろいろ考えた結果、お客様に後押しされる形で2年間だけ新し場所で肉屋をやることになった。そして2年後は、今年の9月にOPENする私の店で若い子たちに技術を教えたいと言い出した。
僕なんて到底かなわない技術を持っているので、うちにいる若い子たちはさらにチャンスが広がるだろう。
関連記事
-
-
久しぶりに八田さんの枝肉を購入し、懐かしい写真もでてきたり、肉屋の仕事について少しだけ振りかえってみました
写真の断捨離をしていたら2010年2月に八田さんの牛舎を訪ねたときの写真を発見。先日のセリで
-
-
近江牛だからおいしいとは限らない
私が幼い頃から慣れ親しんできた近江牛。だからこそあえて言わせてもらうと、近江牛だからおいしい
-
-
牛を屠畜して解体する
牛の眉間にノッキングガンを撃ちつける。ドンっという鈍い音とともに牛は気絶して倒れた。すぐに首
-
-
シェフの好みに合わせた牛肉
シェフとやり取りしながら肉を手当てしていくのですが、毎回悩みます。水分量、脂と赤身の比率、フ
-
-
霜降りがおいしくなくなった理由
霜降りは最近年のせいかあまり食べられなくて・・なんて声をよく聞きます。確かに年のせいも多少は


















