出荷のタイミングを見誤ると肉は本領を発揮してくれない
公開日:
:
2016/04/02
近江牛

たまにですが生産者の方から営業を受けることがあります。さすがに突然来られる方はいませんが最近多いのはSNSでメッセージを送ってくるケースです。そしてほとんどの方が同じような内容なのです。まずは自己紹介、次に牛にストレスをかけずに育てていること。ブレンド飼料を毎日配合していること。肥育日数。○○というブランドで販売していること。さらに愛情・・・です。
これって特別なことなのかな。愛情に至っては動物を飼っている限り当たり前だと思いますし、私たち食に携わっている者が安全や安心を謳っているのと同じようなものじゃないでしょうか。
もちろん、牧場を見て環境を見て牛を見て気にいれば使いたい気持ちはありますが、営業されると引いてしまいます。
さて、久しぶりに頭を抱えたくなるような枝肉を落札してしまいました。目方と格付けは好みだったのですが、肉質がイマイチだったので本命の予備として押さえていた枝肉だったのです。結果として本命があまりにも高くて買い切れなかったので押さえの枝肉を落札したというわけです。
入荷したては当然ながらフレッシュな状態なのですが、なんと表現すればいいのか、赤身が強くてべたっとした肉質なんです。個性がないというか、おいしさを感じない肉だったのです。
販売するのも躊躇するぐらいだったので、冷蔵庫に吊るした状態がしばらく続きました。そんなある日のこと、某シェフから注文が入り、肉がなくなったのですぐに送って欲しいとのこと。しかし、いま出せるものが例の肉しかなかったのです。
なんでもいいから送ってくれとのことなので、シンタマを捌いてお送りしたのです。もうお客さんにお出ししただろうなとか思いながら3日が過ぎました。あまりにも心配になって夜中に目が覚めるほどだったので、電話で確認したところ、「すごくおいしかったですよ!」と予想外の感想を言われてほっとしたというより驚いたのでした。
何度か試食しているのですごくおいしかったはないだろうと半信半疑だったのですが、改めて試食してみると、本当においしくなっていたのです。肉が持っているポテンシャルが全開になった感じです。写真は同じ個体のリブロースですが、うっすら黴が付着しはじめたところです。
タイミングよくリブロースの注文をいただいたので、本日発送させていただきましたが、今回は自信を持ってお届けすることができます。
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当店の近江牛(枝肉)の仕入れは、すべて私が行っている。 生産者との相対(直接取引)もしくは


















