中級を極める
本日の朝、NHKルソンの壺にて「中級を極める」という内容で私と木下牧場さんの取り組みが紹介されました。内容は2001年に起こったBSEで業績が落ち込み、逆転の発想でサシから赤身へと転換していった経由をまとめてもらった感じです。牛肉の自由化以降、輸入牛肉との差別化を図るために生産者は牛にいかにサシを入れるかに専念してきました。そしてサシがたくさん入った肉が「上級」でそうじゃない肉は「中級」という認知のもと、インターネットの普及とともに「格付け」という言葉が一人歩きし、その意味さえもはき違えている人が増えていった感があります。つまり「おいしい肉=A5」がなんとなく良い肉なのです。
畜産関係者がいう「良い肉」と一般の人が思う「良い肉」にはかなり隔たりがあります。ここで問題なのが「サシ」。格付けはいわずとしれた「サシ」をものさしとした考え方であり、そこに味はあまり関係ありません。しかし、サシが入っていれば「おいしそう」に思えてしまうのです。和牛で育った私でさえサシが入った肉は魅力的です。しかし、何度も言いますがサシとおいしさは関係ないのです。ただ、矛盾しているようですが肉のおいしさを決めるのは脂であり、角度を変えればサシも重要なおいしさの要素になることは間違いないのです。
サシにも2種類あって血統の由来で自然に入るサシは香も味もいいのです。しかし牛に負担をかけながらエサのコントロールをして追い込んで育てたサシは食べても旨味がないのです。味が抜けているように感じることがあります。こういう肉はひとくち食べただけで口のまわりがベトつきズドンと重さを感じることがあります。
ところで、ときどき「A4」限定で部分肉(シンタマとかウデとか)を問い合わせてくる飲食店の方がいます。A3ではサシが弱すぎA5ではサシがキツすぎるのでA4がちょうどいいそうです。しかも雌限定とか言ってくる。価格も厳しいことを言ってくる。聞くと近江牛のA4をウリにしているのだそうで、じゃー去勢でもいいではないかと思うのですが、雌と比べると肉質も味も違うそうです。なんともストレスの溜まる話だ。
一般の方がA4やA5の肉を食べたとかいってSNSに写真なんかをアップしているレベルならまだしも、飲食店の方がこういった内容で問い合わせてくるのは勘弁してほしい。まぁ、人様の商売をどうこういうつもりはありませんが、取り引きしている業者の方ともっと密に情報交換しながらおいしさを追求していただきたいと思ったりします。余計なお世話ですが・・・。
てことで「ルソンの壺」の影響もあって今日は忙しくさせていただきました。テレビに映っていた肉ですが、あまり見栄えがよくなかったですね。撮影当日、じつは肉を用意するのを忘れていて冷蔵庫から適当に出した肉だったのです。一瞬しか映らないと思っていたのですがけっこう長く映っていたのでなんか恥ずかしかったです。
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