プライオリティの決定は自分が食べたい肉であること
公開日:
:
2013/03/17
雑記

経産牛のチマキ(スネ肉)を50日間熟成させてみました。
20日に開催される肉Meets@IL GiOTTOで使う素材として、ちょっと珍しい熟成肉のチマキを用意してみた。高橋シェフに、チマキがいい感じで仕上がってるんだけど20日に使いますか?
と振ってみたところ、もちろん!と即答。このノリがいいんですよね。最高です。
今日は1日実店舗でたまっている仕事をこなし中なのだが、市内で焼肉店を経営している方から電話がかかってきた。出張中にも電話をくれていたらしくて、仕入れに困っているとのことで急遽来店いただきお話を伺うことに。
HPやブログをご覧になられた上でお電話いただいたようで、つまりは「共感」ということになるのだが、商談はサシがどうとか赤身がどうとかの世間話が中心で、自分で食べたくない肉はお客さんに出したくないよねという話でまとまった(笑)
結局は、プライオリティの決定をサシに委ねている店が多くて、じゃー、あなたたちが普段食べている肉はお客さんに提供しているようなギラギラとサシが入ったロースやカルビなの?てことなんですよ。
今日も商談していて感じたことなんだけど、「良い肉」と「食べたい肉」は違うということ。
もっと深堀するなら「良い肉」と「おいしい肉」ということになるのだが、良い肉というのは見た目がキレイで良くサシが入っているもの。A5に代表される格付けで高ランクな肉のことです。
ここが勘違いされやすいところなのだが、格付けの指標なのかに「味」に関する項目はないんです。格付けの指標の1つにサシの入り具合があり、簡単に言ってしまうと見栄え重視でサシがよく入った肉ほど市場で高値がつきやすいのだ。
メディアの影響もあり、「美味しい肉=A5」が1人歩きしているような状況だが、もう一度言うと格付けは味(おいしさ)には関係ないのだ。
逆に、赤身が多くてサシが入らない肉は、格付けで上位にランク付けされることはなく、高値がつくこともなかった。いままでは・・・
しかし、ここ最近、私を訪ねてくる料理人たちは(今日の焼肉店の方もそうだが)赤身で味のある肉を探している方が多い。
まぁ、そうじゃない方は訪ねてこないわな。
この方たちは、格付けは1つの目安にすぎなくて、プライオリティの決断は「自分がお金を出してでも食べたい肉」なのだ。
そもそも肉質は、牛の品種や血統、飼料(エサ)、育て方、環境、性別、出産経験、生産者の人柄・・・などの要素で決まるもので、同じ血統同じ環境で育てても、27か月で仕上げるのと30か月で仕上げるのとでは微妙に肉質が変わってきたりする。出荷のタイミングを見誤ると脂がついてしまったりと、このあたりは生産者の経験がものをいうのだ。
肉は未経産の雌牛(処女牛とか言われている)が良いとされている。出産を経験した経産牛は未経産牛と比較すれば肉質が劣るため、市場価格も高値は望めない。加工品にしたり、へたすれば廃牛扱いなのだ。
しかし、経産牛のほうが味わい深いと評価する声もあり、昨年あたりから経産牛がとんでもない価格で取引されているのだ(滋賀の市場だけだと思うが)
私も経産牛をこよなく愛する1人なのだが、とうぜん枝肉から骨を抜いてカットするだけの工程では硬くて万人受けしない。
がんばって出産してくれた経産牛をなんとかおいしくできないものかと、いろいろ考え試行錯誤した結果のドライエージングなので、私は経産牛を食べる頻度が非常に高く、レストランなどの取引先が扱う量も日増しに増え続けている。もちろん大好評だ。
ちなみに写真のチマキ、熟成させていなければミンチにして加工品にするしかないほど硬い。
私もそうだが、みなさんもモノを買うときはスーパーや小売店を利用すると思う。
そういうときって「いち消費者」の立場で買い物するわけだが、よく考えれば消費者だけの人っていないと思うのです。場所を変えれば売る立場であったり、作る立場であったり、つまり消費者であり生産者でもあると思うのです。
そうやって物事を考えると、やっぱり自分が好んで食べないような肉は売りたくないなぁ。
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