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バトンリレー

公開日: : 2023/09/19 雑記

先日、東京で開催された秘密のレストランにて、あか牛を飼ってる遠藤くんが、ゲストに動画を見せながら説明している様子。
サーロインは(きろろ)、焼き手は宮本けんしんシェフ

もう何十年も前のことだが、シャトーブリアンだけ欲しいと、料理人から電話があった。いまは僕が電話にでることはないが、当時は僕が出ていたので、よくモメた。

肉を捌き、筋を引き、カットしたりスライスしたり、加工品も作っていたし、客が来れば接客もする。そんなバタバタしたなかで、シャトーブリアンだけ欲しいと。断っても、いつならあるのか、予約したいと食い下がる。次第に腹が立って言葉も荒くなる。

別の日に、相手がや◯ざだったこともある。電話を切って30分後にすごい剣幕でやってきた。当時から隊列を乱すようなことばかりやっていたので、それはもう、いろんなことがあった。インターネットで肉を売ってるだけで、あいつは肉屋じゃないと言われた時代でしたから。

まともにやるって、こんなに大変な業界なのかと常に思っていた。でも、やり続けていれば、時代も変わり、なんとかなるもんで、いまも肉屋を続けられている。あいつは肉屋じゃないと言った方々も、いまではホーページを持ち、インターネットで肉を売っている。

僕が横道逸れずに、まともにやってこれたのは、真面目で誠実な農家さん(牛飼い)のおかげです。農家さんもピンキリで、悪いやつもいますからねー(笑)

100頭とか200頭規模の小さな農家さんの牛を任せてもらい、その方々に胸を張れるような肉屋でありたいと、欲を出さず一店舗にこだわり続けてきました。そして、その牛を使ってくれる料理人の方々が、誇りに思ってくれるような人間になりたいと、取引先を制限しながらコンパクトで強い肉屋を目指してきました。

農家さんからはじまるバトンリレーは、僕から料理人へ、そして食べ手につながる。だれか一人でも欠ければ成立しません。だれが育てた牛なのかも知らない、枝肉を見たこともない、業者からカット肉を仕入れ、それを料理人へ卸す。これもリレーには違いないですが、バトンが見せません。

僕はいま熊本へ向かっています。今夜は、宮本シェフ(antica locanda MIYAMOTO)と緒方シェフ(洋食おがた)のコラボ会です。この日のために、あか牛を屠畜しました。会には、農家さんも、そこに関わる人たちも、そして、antica locanda MIYAMOTOのお客さん、洋食おがたのお客さんも参加します。

今回、肉になってくれた東海大学産のあか牛「きろろ」は、内臓も含めて、一頭の牛の命を余すことなく、すべてを使います。肉を食べるには、牛を殺生しないといけません。感謝とか軽々しく言うつもりはありませんが、屠畜の現場に立ち会うと、経済動物とはいえ、命の尊さを感じます。偽善だと言われるかも知れませんが、生きていくには、人間も鳥も魚も、他者の命の犠牲の上に成り立っています。

農家さんは、今回の子もおいしくしてください、と僕に託します。僕も、おいしくなるように手当てしていきますが、殺される牛にとっては、そんなことはどうでもいいことかも知れません。

でも、僕は僕の仕事をして、今日もみんなで、おいしく食べてやることが礼儀だと思っています。うちの若い子たちにも、できるだけ牛を見せ、農家さんと交流させ、生き物が食べ物になる屠畜の瞬間を見せて、命に関わる仕事をしているということを実感してもらっています。

以前、同業者の方に、「新保さんのやってることは凄いと思うけど、俺にはそこまでの気持ちにはなれへんわ」と言われたことがある。

毎日のように農家さんとやりとりして、ときには牧場へ行き、放牧している牛を見て、屠殺に立ち合い、湯気の上がった内臓を処理して、その上での手当てですから、同業の方より命に近いところで仕事していると思っています。これは理屈ではなくて、いつの間にかそういう感覚になっていっただけです。

ポーズでやってるわけではないので、うちの社員でさえ理解できないこともあると思います。でも、いまはそれでいいんです。

さて、そろそろ熊本駅に着きます。
満席の新幹線さくらは、前も後ろも海外の方ばかり。隣の女性がカタコトの日本語でいろいろ聞いてくる。それをカタコトの英語で僕が答えるという、、、なんとも。

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