牛肉はなぜアクがでるのか、肉屋的な見解というか僕の見解
公開日:
:
2018/12/28
コラム
中古で買って25年くら経ったかな。肉屋が中古のスラーサーを買う場合、ほぼ100%倒産した同業者のお下がりです。だから僕なんかも業者さんに声かけとくわけです。どっか倒産しそうな店あったらミンチ機押さえといてや、、なんてことを。そうすると社長、掘り出しもんがありますけどないでっか?と・・・。倒産した店の機械なんか縁起悪いと敬遠する人もいますが僕は気にしません。なんで倒産したかは知りませんが、活躍していた機械ですし、まだ動くんだったら誰かが使ってやるほうが機械も喜ぶというものです。
さて、アクについてよく聞かれるので僕の見解です。おそろらですがまともに答えたら、アクは加熱することで肉からでるタンパク質、脂質、コレステロール、ビタミン類、毛細血管内の血液などが集まったもの。という答えになると思うのです。まぁそうなんでしょうが、僕が思うにはスライサーで切ってる限りアクはでます。特にスーパーや百貨店で買った肉はアクがでて当然だと思ってください。現在の精肉店はボックスミート(部位ごとに真空パックされた肉)流通がほとんどです。枝肉から骨を抜いたり、部位ごとに切り分ける仕事をしていない精肉店が大半だと思いますし、そういう昔ながらの仕事にはちゃんとした意味があり、アクに関しても枝肉を触っていないと理解できないことがたくさんあります。僕がよくいう手当ても同じことです。
スライスで大事なのはタンクに乗せた肉が右側なのか左側なのかということです。枝肉から仕事をしている方は、部位ごとに切り分けた肉を見てもどっちが牛の右側か左側か分かると思いますが、ボックスミートで単品仕入れしているとわからないでしょうね。ここを間違えるとアクの原因となる肉屑が付きます。同様にスライサーの刃が切れないと刃に肉屑が付いてしまうのでこれもアクの原因となります。年末年始はスライサーが大活躍するので肉屑がよくつきます。小まめに掃除しながら切らないと肉屑まみれのスライス肉になってしまいます。
要はよく手入れされたスライサーで肉をよく知っている技術者が切るとアクがでない(正確にはでにくい)すき焼きやしゃぶしゃぶが食べられるというわけです。
よく見ると細かな肉屑がついているのが分かると思います。牛の右側と左側を間違えるとこうなります。これがアクの原因です。ちなみに手で切れば肉屑はでにくいですがそんな面倒なことはだれもやりません(笑)
どちらにしても右と左を見分けられる方は早々いません。分かりやすく言えばこういうことです。目の前にサーロインの塊があって、これは右ですか?左ですか?と訪ねて答えられる人がいないと言うことです。ちょっとしたことなのですがこのあたりを知っている方とそうでない方が切る肉は味に差がでるのです。
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