たまにはいいお肉ですき焼きしましょう
気がつけばGWなんですね。年のせいなのか日々ボーッとしているからなのか月日の経つのが早すぎますね。4月後半から5月にかけてはお出かけする方も多いと思われます。この時期は晴れればBBQ、雨予報だとお家で焼肉、全国的にこんな感じではないでしょうか。
しかし、ここ滋賀では天候に関係なく帰省や5月のお祭りに鍋を囲むことが多いのです。私が幼いころの定番と言えば、人が集まればすき焼きとお寿司で、このときばかりと父親が砂糖と醤油で肉を煮てくれたものです。飽食の時代といわれている現代では、人が集まればマクドナルドやケンタッキーな食卓も少なくないと聞きます。
すき焼きは、関西風と関東風がありますが、いまはどうでしょう、あまり関係ないように感じますね。それよりも、関西でも割り下を入れて煮込む方が多いんじゃないかな。ただ、いい肉ですき焼きをする場合は、砂糖と醤油で肉を煮て、あとで野菜を入れて煮る関西風がいいと思うのです。安い肉の場合は、野菜などの具材と一緒に煮込めばいいかな。
とはいっても家庭ごとに様々なやり方があるのがすき焼きの楽しいところでもあり、別にこうでなければいけないというルールもなく、おいしければいいのです。ちなみに私のやり方はいたってシンプル。まず肉の選び方ですが、ステーキや焼肉と違ってすき焼きはあまり量を食べることができません。サシが苦手なので200g程度を目安に赤身肉を150g、霜降り肉を50gといった具合に用意します。最初にサシの多いロース肉を1~2枚食べてから後はモモやウデの赤身肉を食べます。本当はサシの入った肉こそすき焼きに適しているのですが、1~2枚で十分でしょう。
近年、牛の増体が目立ちます。つまり肥育段階で穀物飼料をたっぷり与えて大きくするのです。仕上がりが思った通りいかなくて安価で取引された場合、牛の重量が少ないと採算が合わないのです。だから牛を大きくして単価で稼げない分体重で稼ぐわけです。
さらに、世界的に穀物飼料が高騰しているので生産者は少しでも安価なエサを与えるのです。ビジネスですから仕方がないところですが、これではおいしい牛肉は作れません。
生産者はおいしさの基準をサシで計るしかないのです。
しかも、サシ依存でビタミンコントロールで牛に無理をさせてサシを入れたような牛肉は食べていてもおいしくないのです。このあたりの理屈は生産者や問屋レベルでは分からないんじゃないかな。肉を毎日触って食べないと分からないのです。自分が納得したおいしいものを販売するってこの繰り返しなんです。これをサボるとお客様は自然と離れていくと思いますよ。
生産者は、自分が育てた牛の肉を食べていない人がほとんどです。食べたくても複雑な流通で行方がわからない場合もありますが、1頭の牛を屠って最終的に購買してくれた肉屋で1kgなり2kgなり買ったところで、1頭ベースで考えた場合、本当にその肉がうまいかどうかなんてわからないのです。
1頭の牛からとれる部位は、味がさまざまであり、熟成度合によっても異なります。つまり牛肉は日々味が変化するのです。だから、生産者がいう「うちの肉はうまい」は根拠がないのです。おいしい肉牛をつくるためには、生産者は肉屋やレストランとつながらないといけないのです。常に情報交換しながら、味の確認をしてもらいながら飼育にいかさなければ、おそらくこれからの牛飼いは厳しいと思います。
味の話しをしますと、増体ばかりに気をとられてサシを入れすぎた牛の肉は、割り下が肉に浸透しないように感じます。つまり肉に割り下が絡まないのです。サシのことばかり言ってしまうと批判的に聞こえるかも知れませんが、そうではなく、無理やりサシを入れることに抵抗があるだけで、優れた血統の牛には自然とサシが入る確率が高いのです。だからよい血統の子牛は市場でも高値でセリ落とされるのです。
私たちが木下牧場さんと取り組んでいるのは、家族が管理できる範囲の200頭程度なのでエサは手でやり(最近は自動給餌する農家が増えてきた)、牧草は自分たちで収穫し、とにかく自然に近い環境を作って育てることです。
私が赤身志向なのでA3比率が多くなるような要望を出していますが、それでも血統によってはものすごくサシが入ることがあります。生産者からみればA3になるように育てるなんて無茶言うなよ、、、って話ですが(笑)
念のために言っておきますと、A3の発生率が多くなるとA2になる確率も増えます。となると経営的に大丈夫なの?、、、と思われるかも知れませんが、そこはしっかり買い支えるネットワークができているのでご心配なく。
木下牧場さんの肉が欲しいとの問い合わせがあまりにも多いので、専用ページを作ってみました(→)
木下さんの肉ならサシが入っていてもくどくないんですか?と問い合わせをいただきますが、ハッキリ申しましてくどいです。サシは脂ですからくどくてあたりまえ。同業者で雌牛は脂の融点が低いからあっさりしているという人がいますが、そんなことはありません。
ただ、赤身比率の多いA3あたりのサシは比較的食べやすいのです。もうねぇ、A5のサシなんて私は無理ですね。モモでもサシが入りますから胃もたれしますしね。サシ重視の生産者はこういった牛の肉をもっと食べるべきです。好みとビジネスは別でしょうが現実を知ることも私は生産者にとっては大事なことだと思うのです。そして世の中がどのような流れになってきているのか・・・そういったことも念頭においておくべきじゃないかな。
てことで、かなり話が飛びましたが、すき焼きに戻しますと、国産牛、ブランド牛、輸入牛肉、高い肉、安い肉、どれを使うかによって作り方も違ってきます。
いい肉ですき焼きをする場合は、先にも書きましたが、砂糖と醤油で肉を煮て、あとで野菜を入れて煮るやり方がいいと思うのです。安い肉や切り落としの場合は、一緒に入れて煮込めばいいと思います。
冒頭の写真はイメージ用に盛り付けたもので、本来こういうやり方はあまり感心しません。実際、私は水分の多い豆腐や白菜、しらたきは入れないんです。ねぎも短めに切って縦に並べると熱伝導でしんなりと柔らかくなり味が染みやすくなります。ねぎを横にすると火の通りが遅いですからね。
作り方は個人差があり、家庭の味みたいなものがあったりしますが、たまにはいい肉ですき焼きをおすすめします。頻繁に牛丼屋やコンビニのすき焼き弁当では味覚がボケてしまいますよ。
かの池波正太郎さんは、「たまにはうんとぜいたくなことをやってみないと、本当のすきやきのおいしさとか、肉のうま味というのが味わえない」と言っておられましたが、本当にその通りだと思います。
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