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東海大学産、阿蘇草原あか牛が驚くほどおいしくて感動したのでした

公開日: : 2016/10/21 肉牛の品種, イベント

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阿蘇の草原あか牛を流通させている橋村さんから連絡があったのが去年だったか、今年の初めだったか、本当に年々忘れっぽくなって迷惑かけっぱなしです。橋村さんからの相談事は東海大学農学部が飼養している草原あか牛を私に預けたいとのこと。草原あか牛は味が淡白なので脂が苦手な方には好まれるのだが、いかんせんあっさりしすぎていて味に深みがない。なので、なんとかならないものか試してほしいというのだ。ぶっちゃけるとあか牛といえば熊本より土佐あか牛のほうが私はおいしいと思っている。しかし、一度だけ食べ比べる機会があっただけで、そのときの記憶だけで判断するのもどうかなと・・・。ご存じのように牛は個体差と手当てによって味は大きく変わってしまう。橋村さんもそのあたりに期待してくれていたのか、わざわざ当店までお越しいただき、じゃーやりましょう!ということになったのだった。ところが、その後地震でこのプロジェクトは一旦立ち消えたのでした。

橋村さんから連絡があったのは、地震のニュースがメディアから発信されなくなった頃だった。予定通り、今年最後となる草原あか牛「夕波号」をと畜したので送りますと。地震の被害はかなり深刻で、生徒たちは校舎に戻れないので、先生たちが手分けして牛の世話をしているとのことだった。いまもその状況に変わりはなく、メディアが発信しなくなってからのほうが事態は深刻なのだ。毎日のように殺人や虐待などテレビのニュースは騒がしいけど、もっと私たちが知らなければいけないニュースがあるように思う。

と畜後、せめて30日は枝肉で置きたかったのだが、橋村さんと東海大学の服部先生、そして私のスケジュールを調整すると10月18日、この日しか空いていなくて、毎度毎度イルジョットの定休日だというのに高橋シェフに無理を言ってお願いしたのだった。

せっかくの機会だから、100名規模で食べる会を行ってもよかったのだが、そこに意味を感じないのと、間違いなく料理のポテンシャルが下がると思うので、感度の高い友人交えて9名での食べる会となったのでした。

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マリネした肉をローストビーフに見立てた一皿目にその後の期待が膨らむ。

私が知っているあか牛は真っ赤な印象だったのですが、A2程度のサシが入っていたので驚いた。服部先生も同様に驚かれたようで、これは完全に餌の影響だとのことでした。

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左が草原あか牛、右がジビーフ。こうやって見てみるとジビーフの赤さは尋常じゃない(笑)
水分が抜けきっていないのが写真からもお分かり頂けると思いますが、あと20日程度でカラッとした肉質に変化しておいしくなってくれるでしょう。一方、草原あか牛はこれ以上引っ張るとおいしさのピークが下がってしまうので、ちょうどこの日がベストのタイミングでした。

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そもそも、草原あか牛ってどんな牛なの?って方は読みにくいですが拡大すればなんとか読めるかと思いますのでよろしければ。

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しゃぶしゃぶをイメージした一皿。脂質が上品なので嫌味がなく、口どけが良い。いやらしい脂身を食べた後のべとつき感がまったく感じられなかった。

草原あか牛は、東海大学農学部の先生と生徒が育てた牛だ。春先に野外で自然分娩させ、母牛と共に阿蘇の草原で5.5ヶ月間親子放牧をさせながらのんびりと育てられた牛だ。学生たちに愛されて育った牛は素敵な物語となり行ったことがなくても背景が浮かぶ。しかし、私は肉屋の仕事として物語や背景よりもおいしさにこだわりたい。料理していただいた高橋シェフもおそらく同じ気持ちだと思う。

私は、高橋シェフの料理をイメージしながら短期間で仕上げる方法を考えてみた。と畜から食べる会まで一カ月もないのでドライエイジングはダメ。ちょっとばかり細工してみたのだが、結果として最高の状態で高橋シェフへ手渡すことができた。少しだけ自分で焼いて食べたのだが、あまりのうまさに驚いたのでした。

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食べれば、凛々しいあか牛の鉄分に、ほのかな黒毛の甘い香りが漂って、心を掻き立てる。
雄々しい味を噛み締め、噛み締めて、喉元に落ちようとする時、甘い香りが広がって、穏やかな気分となる。煮込みは筋のコラーゲンが甘く溶け、ステーキは塩が肉の味を叩きつけてコーフンさせる。

歯が肉を砕くたびに、牛の命と共に上昇していくような、高揚感がある。
阿蘇山の広大な草原で、心地好さそうに草を食む牛を思い浮かべて、感謝した。

愛されて育った動物は、皆穏やかである。

この牛たちも、学生たちに可愛がられて、本来の牛らしく暮らして、皆穏やかな顔をした牛たちであるという。

牛を育てた学生や先生、肉屋の新保さん、高橋シェフ。
様々な人の知恵と熱意を経て、牛は昇華した。

僕らを幸せにし、血と肉となってくれた。深く心に刻む。
もう言葉はいらない。

震災で牛と別れざる得なくなった学生たちが、再び牛に触れる日が来ることを祈る。

(タベアルキスト マッキー牧本)

来年の出荷は4頭だそうです。初出荷が6月頃だということで、またチャレンジさせていただけると嬉しいです。それはそうと、お母さん牛が一頭残っているらしく、年内にふたたび食べる会をやりたいと思っています。

 

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