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肉屋の仕事とは伝統を継承しながら陳列のなかに文化を創っていくことだと思うのです

公開日: : 2016/06/25 雑記

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いろんな方が働きたいとか研修したいとか、私に直接であったり知り合いを通じた間接的であったりとか、まぁ、小さな肉屋の店舗を構えている身としてはありがたくもあり迷惑でもあり(笑)、それでも断るのが苦手なので受け入れてしまうのですが、実際教えることってないんですよね。1ヵ月も2か月もうちにいれば別ですが、1日や2日では包丁の握り方と肉に向き合う姿勢ぐらいなものですよ。そもそも教えるのが下手なのでなんともですが・・・。

みなさんの目的は様々ですが、ホームページを見て共感したとか捌きの技術を学びたいとかが多いかな。残念ながら肉屋になりたいからという方は皆無ですね。ここが料理人を目指す人との違いかも知れないですね。肉屋に憧れたり、職業としてなりたいという人はあまり聞いたことがないですね。おそらく魚屋もそうじゃないかな。社会的地位が低いとまでは言いませんが、料理雑誌のように肉屋雑誌なんてものもありませんし、私としてはけっこうカッコいい仕事だと思ってるんですけどね。

肉屋の醍醐味はなんといっても大きな枝肉から骨を外して精肉にするまでの過程だと思うのですが、最近ではなんでも手間を省いて効率化を求めるので、骨を外すのは問屋さんの仕事、肉屋は真空パックで流通しているブロック肉を商品化するだけになっています。流通革命とか時代の流れでしょうがないと言ってしまえばそれまでですが、捌き(骨を外す)技術を継承する職人が少なくなってきている実情もあります。

捌きを覚えたいとか、肉のカッティングを学びたいという人はたくさんいるのですが、もし、肉屋になりたい人がいるなら、陳列(ショーケース)を学ぶことこそ肉屋の本筋であり醍醐味でありおもしろさだと声を大にして言いたいものです。ま、あくまでも私の考え方や持論、思うところが大きいのですが、そもそもは出発点に大きく関係していて、私が小売店からスタートしたので陳列を最優先に考えていますが、これが問屋からこの世界に入っていたのであれば、もしかすれば捌きやカッティング技術に重点をおいていたかも知れません。

肉を捌いたりカットしたりは毎日やっていればある程度はできるようになります。もちろん個人差はあります。3日でできる人もいれば3年かかる人もいるわけですから。ま、これは極端な例ですが、同じことを何年もやっていればよほどでない限り、ある程度はできるようになると言うことです。ですが、陳列に売るための肉、つまりすき焼き用やしゃぶしゃぶ用、焼肉、ステーキ用の肉を一頭の枝肉を使って余すところなく商品化することは、センス(見せ方)であり技術なのです。さらに利益も上げなければいけないとなると、そろばん勘定も関係してきますからトータルで完成度を上げていく必要があります。

いくらキレイな陳列を作れても、最終的な判断はお客様からの評価であり、おいしかったのリピートですから、肉屋の仕事は奥深くて肉を育てなければトータルコーディネイトできないのです。そのために、牛を見て、枝肉を目利きして、肉を育てて、手当てして、それらに見合った捌きやカッティング技術が必要なのです。どれか1つ欠けても満足いく仕事はできませんし、私が思う陳列は作れません。牛はと畜で命が絶たれますが、枝肉から再び命をふきこむが肉屋の仕事だと思っています。

たかが肉屋、なにをたいそうなと思われそうですが、それくらい値打ちがあり、一生かけても納得いくことはない仕事だと思っています。

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カイノミ(トモバラの一部)ですが、同じ部位でもに肉質を見極めながらカッティングを変えていきます。肉は個体差がありますから、同じ部位でも表情が違います。そのあたりも肉に魅了されながら仕事としても食べ手としても、楽しめるところなのです。

 

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