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おいしい肉を作るには手仕事しかないのです

公開日: : 2015/02/17 近江牛

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私のお肉を扱ってくれているシェフたちの多くが40代です。自分の手に負えないほどたくさんの取引先を持つことは避けているので時間が許す限りは出向いて食べるようにしています。もちろん時間的な制約もありますので、いまだに行けていないお店もあります。

シェフの進化はすごいと思うのです。若いころにヨーロッパで修業したシェフもいれば国内のレストランを渡り歩いて腕を磨いたシェフもいます。どちらがいいのかわかりませんが、とにかく食材に敏感です。例えばエサを変えれば肉質が変わります。そのあたりのチェックもシェフたちは鋭く、じゃーどうすれば目の前の肉がうまくなるのかをやるわけです。水分が多ければ乾かしたり、火入れの時間を調整したりと個体に合わせた料理をやるわけです。

私ができることは最高の状態の肉をシェフに届けることです。それしかないわけです。写真の近江プレミアム牛ですが、イルジョット高橋シェフの預かり肉で、まずと畜から12日目(1月30日)にウチヒラを送っています。2週間くらいかけてゆっくり使っていただき、本日マル(シンタマ)を送りました。この後さらに2週間後にソトヒラ、そしてランプ(ランイチ)の順になるわけですが、骨の外し方も特殊です。通常の順序とは異なるやり方で必要な部位だけ取り出すわけですから、流れ作業のような捌き方ではなく、じっくりと取り組まなければいけません。

今日の段階では、かなり水分も抜けて状態的にはいいのですが、高橋シェフの火入れを考えるとソトヒラを送るころがベストな状態になりそうです。とはいっても高橋シェフは自身でも肉を乾燥させる技術をお持ちなので問題はないのですが、シェフの力量に見合った肉を選ぶのも私の仕事だと思っています。そのためにはシェフの料理を定期的に食べ、そして意見交換を頻繁にしなければいけません。

シェフの力量に見合ったなんて言うと、かなり高飛車で生意気な言い方に聞こえるでしょうが、例えば熟成肉を食べたこともないシェフに熟成肉を送ることはできないのです。実際、そういった問い合わせが多くあるのが現状です。まずは熟成肉を買って焼くなり外食で食べるなりを繰り返して、それで興味があれば取引の話しになると思うのです。ブーム的なことで食べもせずにいきなり使いたいは…ちょっと困ります。

前にも書きましたが、当店では肉を真空パックで保存しません。色が変色しても枝肉のまま吊るしておきます。肉が持っている酵素を生かすためには枝肉で吊るす方法がベストなのです。真空パックではバキュームでギュッと縮んだパック内にドリップ(肉汁)が溜まり、溜まったドリップは脂や肉に浸透するわけです。さらにパックを破った際にドリップと一緒に酵素も流れるので、旨味が抜けたカスカスの肉になる可能性が大きいのです。

とは言っても、私が手がける肉がすべておいしいわけではありません。ハッキリ言っておいしくないものもあります。なにが違うのか正直分からないことも多いのですが、そのあたりを追求することも牛肉のおもしろさなのです。シェフの進化と共に私もそれに応えられる肉を提供しなければなりません。牛を見て、枝肉を見て、自分で骨を抜き、他人の手を介さずにやり続けるには、ビジネスを大きくせずに1頭の牛とじっくり向き合い探求しつづけるしかないのです。

 

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