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だれが育てた肉なのか

公開日: : 2014/03/02 雑記

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当店の仕入れは、セリか相対(農家さんと直接取引)を基本としているのですが、付き合いとして問屋さんから仕入れることもあります。ただ、問屋さんより私のほうが圧倒的に生産者情報および商品知識に優れているから商談が成立しないことがほとんどです。

なんだか自慢しているようで嫌なヤツっぽいですが、こういうことです。

問屋さんがセールスするのは価格、格付け、近江牛であるということ。この3点です。そこにモノと価格のバランスをあーだこーだと言う程度。

私が問屋さんに聞くことは、生産者はだれなのか。この1点のみ。格付けなんてどうでもよくってモノ(肉)を見ればだいだい分かることだし、それよりも、だれが育てたかを重要視します。

残念ながら生産者名を答えられる問屋さんは1人もいません。生産履歴書をみたり個体識別番号を元に検索すれば分かるのだが、それがだれなのかはまったく知らない。

近江牛ならなんでもよいというわけではなく、私はこれからも生産者にこだわりたい。「商品環境」を知らずして肉を仕入れることはない。つまり、知っている生産者が育てた牛の肉であり、しかも私が牧場へ行ったことがあり、環境も把握していない肉をお客様の食卓へ届けることはない。

格付けに重きをおく人もいれば、肉質を重視する人もいるだろう。どれも間違いではないが私はだれが育てたのかを最重視している。生産者も同じように肥育のポイントは人それぞれ違った当たり前なのだ。

写真はソトヒラ(太腿の外側)だが、問屋さんはA5を商談の材料として高価格での取引を希望してきた。しかし、肉を見ると筋炎(シコリ)が起こっている。つまり、問屋さんは肉を見る眼力がないということだ。

では、なぜ筋炎が起こるのか?

筋肉の外傷や筋肉内注射などが原因とされ、ビタミンA欠乏症も関係していると言われています。

ビタミンA欠乏症とは、黒毛和牛は、人口授精して生まれた子牛がある程度成長したら、牛舎内で繋いで育てます。エサは米国から輸入したコーンを主体とした高カロリーな濃厚飼料です。これを毎日与えることにより、本来は脂肪(サシ)の入らない筋繊維にまでサシが入るのです。栄養バランスの観点からみれば、かなり偏った食事であり、サシを入りやすくするために、ビタミンA不足にするわけです。出荷前の状態で、瞳孔が開きっぱなしで目が見えない牛や立ち上がれない牛がまれにみられますのは、ビタミンA不足が要因の1つとも言われています。

こういったことは、実際に牧場で牛を見て学びました。だからこそ知っている生産者の牛の肉しか仕入れたくないのです。A5発生率の高い生産者からみれば私の戯言など経済動物相手になにをあまいことを、と言われそうですが、それでも私は育て方にこだわりたいのです。格付けとは別の世界で、ストレスなく大事に育てられた牛を少しでも高く引き取ってやりたいのです。

こういったことを理解し、共感してくれるお客様とだけ取引していきたい。そんな思いが年々強くなっています。自らの首を絞めるように商売の間口を狭くしていますが、それでも支えてくれているお客様と一緒にたのしい食卓を演出していきたいと思っています。

牛を育てる、その牛の肉を売る、ということは責任重大なのです。

 

 

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