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注目のドライエージングビーフ(熟成肉)いよいよ全国放送へ

公開日: : 2012/12/02 熟成肉

来年の1月にあるテレビ番組で木下牧場の特集が組まれることになった。

木下牧場の「牛肉」にスポットがあてられるのだ。

しかも全国放送でコーナー出演ではなく全編木下牧場の牛肉ということで、ここのところ毎日のように打ち合わせで結構大変だったりする。

木下牧場では、約200頭の但馬系近江牛が元気に育っているのだが、他の牧場と大きく違うところは、経済動物を経済動物らしくない飼い方をしているというところだ。

和牛は「=サシ」が高く売るためのフィクターであり、そのためにサシが入りやすい血統の子牛を導入したり、ビタミンコントロールをしたりと、もっとわかりやすく簡単な言葉で言うと、サシがたくさん入ったA5の肉を作るにはどうしたらいいのか。牛飼い(生産者)の悩み苦しみ喜びはそこに尽きるわけだ。

しかし私が木下さんにお願いしているのは「健康な牛肉」であり、そのためには余計なサシはいらないという生産者にとっては夢のない話なのだ。

サシさえビッシリ入って良い評価をいただければ共進会で優秀な成績もおさめることができる可能性があるのだが、ただでさせ重量がのらない但馬系で、しかも無理にサシを入れないようにとお願いしいるのだから木下さんにとっては、やりがいを他にみつけるしかないわけだ。

そのやりがいが消費者からの「おいしかった」という賞賛でありリピートであることはこの数年でたくさん経験してきた。

さて、今回テレビがスポットをあてているのは自然循環型の畜産から生まれた国産飼料100%で育てたプレミア近江牛だ。そして通常なら廃棄扱い、もしくは加工品に使われる近江長寿牛(経産牛)を用いた日本型D・A・B(ドライエージングビーフ)なのだ。

日本型とあえて書いたのは、D・A・Bはアメリカが本場であり、アンガスやシュートホーンなどサシのない赤身で行われ、どちらかといえば霜降り好きな日本人には好まれないだろう、いや、そもそも日本にはD・A・Bに向く肉はないだろうと言われてきた。

しかし、私は3年前に経産牛をなんとか商品化できないものかとあれこれやった結果に経産牛のD・A・Bにたどり着いたのだ。サシの多い肉を熟成させてD・A・Bとして売っている店もいくつかあるようだが、私の考え方からは外れるのであくまでも評価の低い肉か市場で買い手がつきにくい肉を熟成させてD・A・Bとして販売している。

私の考え方は、赤身の硬い肉をどうやったらおいしく食べることができるのか、という食べ方の提案の1つが熟成肉であり、なんでもかんでも熟成にすればいいというものではない。例えばA5の肉ならわざわざ熟成させなくてもシンプルに食べれば十分おいしい。コア商品との位置づけで取り組んでいる場面にも遭遇するが正直間違った見解を聞くことも多々ある。

専門料理の11月号(2011年)にやまけんさんが私のことを書いてくれていたので、そのときの記事をもとにD・A・Bについてもう一度おさらいしておきたい。

その前に、今回の撮影では、熟成庫や東京の友人宅での熟成肉パーティの様子も取材の予定で放送後の反響が少々怖い気もする。熟成肉に注文が殺到しても対応できないからだ。

さて、肉の熟成に必要な3大要素は次のとおり。

①湿度と温度、風のコントロール

肉を置く(吊るしておく)冷蔵庫は一定の湿度と温度で管理するのだが、冷蔵庫の大きさもそこそこのものが必要で設備投資も半端なく、本格的にD・A・Bを作るにはレストランの厨房では無理がある。じゃー簡単にというわけにいかないのもD・A・Bで、よく家庭用の冷蔵庫の姉さん程度の業務用冷蔵庫でD・A・Bを作りましたと試食を頼まれることがあるが腐る一歩手前の場合だった、というようなことがたびたびあった。万が一を想定するとちゃんとした設備でチャレンジしてほしい、もしくは専門的にD・A・Bを手掛けているところにお願いしたほうが無難だと思う。

②酵素の働き

肉の中にはタンパク質を分解する酵素が含まれている。この酵素が旨味となるわけだが、肉の流通はいまや部位ごとの真空パックが主流。一昔前までは枝肉流通が主流だったのだが真空パック流通に変わってから、肉がおいしくなくなったという意見が多くなった。これは、真空パックにするときのバキュームにより酵素を含んだドリップが外へ流出してしまうためなのだ。だからD・A・Bは骨付きが鉄則。

③菌による熟成香

D・A・Bにとって一番重要なのが菌の問題だ。菌を自然発生させる方式と培養した菌を塗り付ける方式の2通りがある。どちらも試したがいまは自然発生のみでドライエージングさせている。この菌が熟成香に影響するのだが、科学的検証をしたわけではないのでハッキリとしたことはわからないが肉に含まれる2種類の水分(結合水と自然水)がD・A・Bを成功させるためには大きな影響を与えているのではないかと思う。

京都府立大学の佐藤先生に行っていただいた官能検査はおもしろい結果だったが、残念ながら木下さんの肉は、通常の肉と熟成肉とでは大きな違いがなかった。残念ながらというと本当に残念に聞こえそうだが、こういうものは違いがハッキリしていたほうが驚きもあっておもしろいと思うのだ。逆にこの結果は私たちの自信にも繋がった。いつも販売している肉が格付けではなく旨さで検証されたようなものだから。

小難しいことを書きだすと頭が痒くなるのだが、私は研究者じゃないので本で学んだ知識しか持ち合わせていないということを前提で、肉に含まれる水分について、まず結合水はタンパク質やミネラルと化学結合しており、自由水は環境や湿度、温度の変化で移動したり蒸発する。肉の旨味は結合水からなるもので自由水は肉の旨味にはあまり関係ない。しかし実は自由水に菌が付着して白カビが発生するのだ。

それとDA・Bがいくらでも食べられるのは融点が低いということ。つまり、不飽和脂肪酸含量が高いほど、融点が低い傾向があることから、旨味と関係あるオレイン酸の含量も多いのではないかと思われる。

来週は、熟成庫の撮影やらインタビューがあり、さらには東京の友人宅でD・A・Bを焼かせてもらうことになっている。今年の師走は例年以上に慌ただしい。

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