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ミモザとマンゴーと吉田牧場と肉屋としての僕のスタイルと

公開日: : 2018/05/28 吉田牧場のブラウンスイス牛

2017年9月19日、2日後に新店舗のオープンを控えてバタバタするどころか僕は余呉の徳山鮓にいた。けっして余裕をかましているわけではなく、十分な段取りをしているわけでもない。ましてやスタッフは19歳のジンと20歳の了平だけなので以前の僕なら考えられないことだ。数年前なら三日三晩徹夜で段取りしていたことだろう。この日は徳山さんの定休日。その貴重な定休日に全国から天然と養殖の鰻を集めて食べようというのだ。集まったメンバーもヤバい顔ぶればかり(笑)

鰻の話しはさておき、翌日、吉田牧場の全作さんと原野さんが車で来ていたので途中で落としてもらえないかなと内心思っていたところ、全作さんから店に寄りたいのだが・・と好都合なお言葉を頂戴したのだった。ちょうどブラウンスイス牛が入荷したばかりだったので、これはいい機会だとお二人に肉となったブラウンスイス牛を見てもらうことにした。きっと喜んでくれるだろうと僕はウキウキしていた。

ところが、全作さんはそうでもなかったのだが原野さんが神妙な面持ちで黙り込んでしまったのです。え、どうしたんだろう・・

ちょっとショックですね。この子が生きてる時の姿しか見たことがなかったので。でも、こうやって肉になったのが現実なんですね。おいしく食べてもらえることがこの子も幸せだと思います。(うる覚えですがこんな感じのことを言っていたように記憶しています)

僕は、同じ牛飼いでも食肉を生業としている生産者としか交流がなかったため、原野さんの言葉は衝撃でした。何十年と付き合ってきた和牛の生産者は枝肉を見て、次の肥育に活かすべく僕と意見交換したり、成績によって一喜一憂するのですが、原野さんは牛飼いでありフェルミエであり、まさしく牛は家族の一員なんですね。全作さんは芝浦に出入りしていたこともあるので、枝肉を見慣れていたというか日常的だったので淡々としているように見えたのですが、よくよく考えれば食肉として飼っているわけではないので変わり果てた姿は慣れるまで時間がかかるのかも知れません。全作さんも原野さんも心根は、高く売ることが目的ではなく、喜んで食べていただくことですから。

僕の手元に一冊の本があります。著者は吉田全作さん「吉田牧場 牛と大地とチーズとの25年」というタイトルで2010年に出版された本です。本の中に「牛と人のあるべき姿」が書かれています。酪農家が牛に天寿を全うさせるのは、効率を優先させるので非常に難しいといった内容です。こうも書かれています。全作さんは10産を目安に14~5年は搾乳したいと思うし、そのことで彼女らが少しでも長生きできればと思っています。途中で怪我や病気などするのでまだ10産まで到達する牛は現れていません。さらに読み進めると、ミモザという名の牛が8産と、牧場最多産回数を誇っていましたが、今年の春、産後の怪我がたたって歩けなくなり、残念でしたが泣く泣くお別れをしました。彼女が10産したら引退させて、のんびりと余生を過ごしてほしかったのですが。

・・・え?ミモザ

先週入荷したばかりのブラウンスイス牛。全作さんからいただいた情報には、今回出荷した牛はマンゴーという名前で、2009年4月6日生まれ。ミモザという賢く優しく多産の母親から生まれた牛です。ミモザもマンゴーも女房が大好きで、優しい牛には女房の大好物をつけてました。種が付きにくくなって出荷しました。 病気もぜず坂をものともしないで昇り降りしていましたからしっかりした(硬い)肉質だと思います。とのこと。

あぁーなんということだ。10年前に全作さんと知り合っていたらミモザも僕が預かったのにと悔やまれます。

僕たちは問屋じゃないんだから肉を買っているという気持ちで仕事をしてはいけない。生産者から預かっているだけなんだからおいしくしてたくさんの方に返さなければいけない。365日24時間寝ても覚めてもに肉のことばかり考えていなければいい仕事なんてできないよ。と僕はうちの若者2人に口酸っぱく言っています。若い2人は、またかという顔してますが(笑)

問屋さんからボックスミート(部位別に真空パックされたブロック肉)を仕入れているのであれば、僕は何の感情のなくビジネスに徹して足し算引き算をやると思います。もしかしたら今頃ビルの1つでも建っていたのかも知れません。しかし僕がやっていることはとうていビジネスとは縁遠いことばかりで、いつもしんどい方向へ向かっているような気がします。だれもやらない、やりたがらないことをやるわけですからしんどくて当たり前ですが、生産性や効率を追わず、自分が納得できることだけを仕事にしないと心が疲れます。ときには流通を整備して牛を運んだり、目の前の肉にいったいどれだけの人が関わっているのかと思うと、1円でも高く売るのではなく1gでも粗末にせず肉としてお客様の元へ届けることが僕の責任だと思っています。

さて、先月入荷したブラウンスイス牛(リカ)ですが、すごく良い仕上がりになりました。ほどよく水分も抜けていまが食べ頃です。明日はリカのTボーンとマンゴーの内臓を吉田牧場のみなさんと味わいます。

 

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